松原佳代さんの家族でポートランド移住生活も、8月で丸1年。予定外のことがたくさん起こり、めまぐるしく変化した1年だったようです。さまざまな変化に対応して生き抜くために、仕事のスタイルにも試行錯誤しているそうです。日本との時差ありリモート経営の苦労の様子をつづってくれました。

 移住から1年がたち、私のリモートワーク歴も1年になった。その間に、新型コロナウイルス感染症の発生、人種差別への抗議活動「プロテスト」、そして最近ではオレゴンの山での山火事など大きな出来事が目白押しだったわけだ。それにより、住居環境、街の環境(外出自粛など)、子どもたちの学習環境が目まぐるしく変化し、それに合わせて、リモートでの働き方の実験を重ねている。

 まだまだ先行き不透明ゆえあくまで中間報告になるが、今回は私のリモートワーク実験を失敗談も含めて紹介したい。

最初にやりがちな失敗! リモートに入る前にやっておくこと

 ポートランドに移住して日本の企業のリモート経営を始めるにあたり、国内のチーム編成を見直した。マネジメント体制も変更して、引き継ぎ期間と移住準備が重なり、バタバタだった。ドキュメントを残し、引き継ぐべきところの引き継ぎはしたつもりだったが、1つやり忘れたことがあった。

 それは「役割の明確化と期待値の調整」だ。

 「様子を見て決めましょう」

 リモートワークの開始時において、この言葉は禁物だ。会議の形態や、会議の時間などはそれでもいい。でも決め残してはいけないことがある。

 私は何をやる人なのか、どこまでの範囲をやるのか、そこが曖昧だと距離が離れるリモートワークではトラブルになる。「あうんの呼吸」で、相手の様子を見て「あ、やっておきます」「ここは私が」というコミュニケーションが難しくなるため、お互いになんとなくお見合いで球を落とす、あるいは動きが鈍くなるという事態が発生しやすくなる。またマネジメント職の場合には、チーム内でそれを徹底しなければ周りにもお見合いが発生する。

 実は最初の数カ月、ここが曖昧で今振り返るとコミュニケーションに苦労した。徐々に巻き返し、3カ月後に一時帰国した際に立て直しをしたが、今思えば、リモートワーク初心者にありがちな失敗となったと振り返る。

オレゴン州も山火事が発生して、煙で空が曇っている。その土地ならではの体験をフィードバックして現地の様子を共有することはリモートワーカーの役割の一つだと考えている
オレゴン州も山火事が発生して、煙で空が曇っている。その土地ならではの体験をフィードバックして現地の様子を共有することはリモートワーカーの役割の一つだと考えている