2019年8月に家族でポートランドへ移住した松原佳代さん。移住早々にロックダウンを経験し、ようやく落ち着いたかと思った頃に、全米で巻き起こった人種差別への抗議運動「プロテスト」に直面します。自ら経験した生の体験をつづってくれました。

 私が暮らすポートランドは、3カ月の経済活動の自粛期間を経て、6月19日に再開に向けた第1フェーズに入った。夜は21時を過ぎてもまだ明るい、初夏のシーズンに突入している。

レストランも一部再開。テラス席でソーシャルディスタンスを保って
レストランも一部再開。テラス席でソーシャルディスタンスを保って

 移住してからさまざまな初体験をしてきた我が家だったが、この1カ月はこれまでの価値観で測ることができない出来事に遭遇した。人種差別への抗議運動「プロテスト」だ。人種差別、レイシズム、デモについての解説は、私はそれを語るに十分な知識と言葉を持ち合わせていないので、そこは専門家にお願いするとして、ひとりの生活者として、日本人として、親として対峙(たいじ)したプロテストと、ポートランドで私が見たプロテストを、紹介したい。

日本で生まれ育った私にはプロテストはあまりにも突然だった

 今回のプロテストの発端は、2020年5月25日に米国・ミネアポリスで起こった、アフリカン・アメリカンの男性であるジョージ・フロイド氏が、警察官の不当な行為によって死亡した事件だ。それ以降、全米各地でプロテストが広がった。

 私が「いつもと何かが違う、大きなことが起こっているようだ」と認識したのは、その週の木曜。ポートランドの公立学校に子どもを通わせている親に向けて、ポートランドの公立学校のトップからこの出来事に対峙する姿勢を伝えるメールが届いたからだった。その日の夜に、ミネアポリスの警察署が燃えていることを知った。そして翌日金曜の夜にポートランドのダウンタウン(中心市街地)でも暴動を伴うプロテストが起こった。そして土曜日。移住して初めてスマートフォンの緊急速報のアラートが鳴った。ポートランドに「夜間の外出禁止令」が発令されたのだ。それから4日間、外出禁止令は続いた。