2019年8月に家族でポートランドへ移住した松原佳代さん。決意してから実際に移住するまでに、どんなことが必要だったのでしょうか。仕事のこと、ビザや住まいのこと、体験から学んだことをつづってくれました。

「家族で海外暮らしをしてみたい!」 それだけで走り始めた

 新型コロナ禍中に始まったこの連載、前回は私が住む米国オレゴン州ポートランドの最新情報として新型コロナのある生活を紹介したのだが、今回は少しさかのぼって「私がなぜポートランドに移住したのか?」という話を書きたい。

 すてきな大義や野望があればかっこいいのだけど……私が移住した理由は「家族で海外暮らしをしてみたい!」。それだけだった

 それは私が長男を妊娠中だった7年前のこと。親が経験したことのない(けどやりたかった)ことを子どもに経験させたい、というありがちな発想が根っこにあった。つまり、それが海外生活。

 子どもを留学させればいいのかもしれないけれど、日本でしか暮らしたことのない私は単純に「私も行きたい!」と思った。そこで、夫に「将来、家族で海外暮らしをしてみるのはどう?」と言ったら「うん、いいね!」と快諾された。我が家の移住計画はこうもあっさりと始まったのだ。

 ひとつ明確だったのは、我が家には企業から派遣される「駐在」という選択肢がないことだ。移住するなら自力でビザを取得し、すべての生活基盤(たとえば現地通貨での収入や保険加入など)を構築しなければいけないこと、だった。

 その後、起業したばかりだった夫の仕事が忙しくなったり、育休を経た私自身が独立して会社をつくったり、と働き盛りっぽい日々を送るようになり、情報収集だけは続けながら、次男を妊娠した2016年、子どもたちの年齢を考慮して長男の小学校入学時を移住の目標とすることを決めたのだった。

 当時私は自分の会社の事業であるPR支援の仕事が増えてきていた。そして2017年に古巣のIT企業から子会社(カヤックLiving)の代表をやらないかとの話をもらった。新規事業の立ち上げがミッションで、事業テーマは図らずも「移住」。次男がまだ生後8カ月だったが、それまで情報収集する中で移住をサポートするサービスが当時日本にないことは知っていたし、自分自身も移住する意思があることと予定している時期を伝えたうえで引き受けることにした。

 そこからは、仕事も暮らしも「移住一色」。2年後の2019年8月に家族でポートランドに移住をした。

ポートランドに移住するまで10年間暮らした鎌倉。海と山の近くでの子育てはとてもいい時間だった
ポートランドに移住するまで10年間暮らした鎌倉。海と山の近くでの子育てはとてもいい時間だった