1999年夏に米国ポートランドに家族で移住してから、ロックダウン、BLACK LIVES MATTERのプロテスト、山火事などの非常事態に巻き込まれ続けた松原佳代さん。そんな劇的な日々の背景には、エシカルで人の温かみにあふれたポートランドの暮らしがありました。今回はその魅力を伝えてくれます。

 3月になりポートランドの梅も咲き始めた。ARIAで書き始めたのはちょうど1年ほど前になるが、COVID-19、プロテスト、山火事と非日常なトピックが山盛りだったため、肝心のポートランドの街の話をしてこなかった! ということに今さら気づいた。ポートランドのガイドブックも、紹介記事もたくさんあるから、ここでは観光スポットやポートランドの街づくりの歴史の話ではなく、一人の生活者として生で感じた、私の好きな3つのポートランドを伝えたい。

ポートランドに春がきた!
ポートランドに春がきた!

公共交通と自転車が縦横無尽に走るコンパクトな街

 私が初めてポートランドを訪れたのは、2017年。移住を考えて10日間ほど試住しに来た。ダウンタウンと言われるApple StoreやPatagoniaなどが軒を連ねる賑やかな中心地(2020年には、ここはプロテストの中心地となり、COVID-19の影響で観光客も減り、ほとんどの店が閉まることになるのだが)。そこから自転車なら20分も行けば閑静な住宅地となり、さらに車で1時間も行けば、豊かな自然がある。そんなコンパクトな街だ。

 海外への移住(とりわけ米国)は、その国で何の身分保証も実績もないから、クレジットカードもつくれなければ、ローンも組めない。車がないと不便な街では、現金一括で中古のボロボロの車を最初に買うというのはよくある話だ。

 でもポートランド市内なら大丈夫だ。なぜなら公共交通がものすごく発達しているからだ。ライトレールと呼ばれる路面電車が東西南北に延びていて、空港までも行ける。ちなみに車での空港まで20分というのもポートランドの売りだ(観光やビジネスで頻繁に空港を使う人が多かったCOVID-19の前までの話)。

 公共バスもごまんと走っているのでどこへ行くにもあまり不便さは感じないと思う。そしてこれらはHOPというアプリひとつで電子決済できるのが、とても便利だ。ポートランドに遊びに行く時はこのアプリのダウンロードが必須だ。