自然体で流れに逆らわず、軽やかに生きる。そんなイメージの渡辺満里奈さん。50歳を迎えた今の心境や、仕事のこと、そして夫のうつ病を一緒に乗り越えたことなど、等身大で語ったロングインタビューを、6回にわたってお届けします。第3回は、夫の名倉さんがうつの診断を受け入れ、治療のために公表する決断に至るまでの経緯について語ってくれました。そこには、とことん寄り添う満里奈さんの姿がありました。

 夫の名倉潤さんが、頚椎(けいつい)椎間板ヘルニアの手術後に睡眠障害に陥ったのは、今から3年前の2018年夏。「手術は成功して、首の痛みもなくなっているというのに、眠れなくなるってどういうこと? って、もう、わけが分かりませんでした」と当時の心境を話してくれた前回(渡辺満里奈 夫のうつ、私が抱いた「不安と危機感」)。睡眠障害はうつ病の代表的な症状で、名倉さんの場合、侵襲(手術で受けた身体的ダメージ)によるストレスが原因とされた。

 そんなことがあるとは知らされていなかった上、処方された睡眠薬を飲み続けても一向に改善しなかったと話す渡辺さん。よりよい治療法や検査法を探し続け、脳の血流量を測定してうつ病かどうかを診断する検査法にたどり着いた。そのとき「これだ!」と思ったという。

編集部(以下、略) 脳の血流量を測定する検査法を見つけたとき、「これだ!」と思った理由を教えてください。

渡辺満里奈さん(以下、渡辺) 夫がうつ病になった原因は、侵襲によるストレスと言われたものの漠然としていて、なんでこんなことになってしまったんだろう、という釈然としない気持ちがあったので、客観的な数値で症状が明確になるのはいいな、と思ったんです。

 これは、どの病気についても言えることかもしれませんが、メンタル系の病気の場合は特に、普段の元気がない精神状態と病気の症状との差が曖昧であるために、医師の経験値によって診断結果も処方も変わるそうです。

 彼は睡眠障害が改善されないと言って、どんどん強い薬を欲しがりましたが、そうした患者の言うとおりに強い薬を処方され続けても困ります。患者本人は、本来の判断力が奪われている状態ですからね。だからこそ医師の経験値ではなく、数値による診断結果ではっきりさせたいと思いました。

「メンタル系の病気は、診断の基準が曖昧に思えるので、不安になりますよね。だから数値で示される検査の方法を選んだんです」
「メンタル系の病気は、診断の基準が曖昧に思えるので、不安になりますよね。だから数値で示される検査の方法を選んだんです」