多くの人がいつかは向き合う介護。一人ひとり状況や悩みごとが違っても、話をしたり聞いたりすることで心が軽くなることも。読者の実際の体験や思いを聞きます。足が悪い母を支えていた父が他界。軽度の認知症もある母を見守るために実家のスマートホーム化を決めた亜希子さん。大がかりな工事をしなくても十分な環境をつくれるそうです。

(上)足の悪い母が自宅で転倒 半日以上気づかず熱中症で搬送
(下)認知症の母が暮らす実家 スマートホーム化で遠隔見守り ←今回はココ

和田亜希子さん 52歳 自営業
神奈川県横浜市にあるシェアハウスで暮らす。独身。実家は千葉県で、2021年に父が亡くなったあとは、足が悪く軽度認知症を患う母が猫と暮らす。きょうだいはいないため、横浜と実家を行き来しながら介護に奮闘。21年9月に母が熱中症で救急搬送となったのをきっかけにITツールを駆使した実家のスマートホーム化に着手。定期的に実家に通いながら、遠隔で母親の様子を毎日確認することで介護と自分の生活を両立。

スマートホーム化

認知症がはじまった母でも使えるIT化

古い実家でも工事不要でスマートホーム化

 以前から、仕事でIT機器について取材をしていたため、母を遠隔で見守るためにITをどのように活用できるのかイメージができたのが幸いでした。

 スマートフォンを使った遠隔操作やAIスピーカーでの音声操作で、エアコンなどの電気機器の操作や玄関のロックの開閉を可能にするスマートホーム化。築数十年の古い実家でも、工事不要で後付けできるアイテムがかなり多くあります。5万〜10万円ほどの予算で、自分で簡単に設置できる範囲で活用することにしました。

 私が実家に最初に取り付けたのが「SwitchBot ハブミニ」というスマートリモコンです。これによって、家中の電気機器のリモコン機能を全て私のスマートフォンに集約。温湿度計のセンサーと連動させて、一定の室温になったら自動でエアコンを運転するように設定し、私のスマートフォンから遠隔で操作することができるようになりました。

家電を遠隔操作できるスマートリモコンは小さな箱状の機器。設置は簡単で、登録した家電のリモコンをスマートフォンで操作できるようになる
家電を遠隔操作できるスマートリモコンは小さな箱状の機器。設置は簡単で、登録した家電のリモコンをスマートフォンで操作できるようになる

 ネットワークカメラは、トイレや玄関が見渡せる廊下と台所にも追加しました。以前からあるリビングと寝室のカメラも、死角ができないように位置や角度を工夫しました。毎日必ず行くトイレには人感センサーをつけて、母が入ったら私のスマートフォンに通知がくるように。少なくとも母が自分で動いていることを確認できます。その日の母の体調を確認したり、管理しやすくなりました。

 親と離れて暮らしていると、電話に出ないだけで不安になるものです。母の日常生活はスマートフォンの通知で確認できるし、何かあればすぐにカメラで確認できる。私の精神的ストレスが軽減したのはもちろん、「何が起きているか分からないからとりあえず実家に駆けつける」ということも減りました。

トイレの飾り棚に人形と並んで置かれた電池式の人感センサー(左)と、レンズ部分が360度回転して廊下から玄関まで見渡せるネットワークカメラ(右)
トイレの飾り棚に人形と並んで置かれた電池式の人感センサー(左)と、レンズ部分が360度回転して廊下から玄関まで見渡せるネットワークカメラ(右)
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