多くの人がいつかは向き合う介護。一人ひとり状況も悩みごとも違っても、話をしたり聞いたりすることで心が軽くなることも。読者の実際の体験や思いを聞き、専門家にコメントをもらいます。今回体験を話してくれたのは、兄と両親を1人でお世話する美佳さんです。フルタイムで働く美佳さんの日常は効率化の工夫であふれています。

(上)3人の介護をフルタイムで働きながら! 超絶効率化テク ←今回はココ
(下)キャリアを犠牲にしない介護 カギは有料サービス活用

美佳さん(仮名) 50歳 会社員 夫と10歳の娘と東京都内で3人暮らし。
神奈川県で1人暮らしをする兄と実家の両親が数年前に相次いで入院、要介護5に認定。母は他界し、兄(70)と父(97)は現在施設に入居

介護のはじまり

一人暮らしの兄と高齢の両親が相次いで倒れた

 マンションで1人暮らしをしていた年の離れた兄と2013年末に連絡が取れなくなり、見に行くと倒れていました。病院に救急搬送されましたが、倒れてから1週間くらい飲まず食わずの状態で排泄もできていなかったようで、腎臓のダメージが疑われ半年くらい入院しました。以前から統合失調症があり、精神疾患の薬を飲んでいたので、それが運動機能を低下させたのかもしれません。

 退院後に1人でマンションに住むのは難しいので、神奈川県の実家近くのサービス付き高齢者向け住宅(以下、サ高住)を探して入居させました。兄は62歳で介護認定前だったので、有償サービスをオプションでいくつか追加契約して、支援してもらいました。

 地域の大きな病院に実家で暮らす高齢の両親と兄を診てもらい、同じソーシャルワーカー、同じケアマネジャー(以下、ケアマネ)に担当してもらえるようにしました。

 東京都内に住む私が車で世話をしに行く際に、実家と兄の施設や病院も回れて、最後に区役所に行って各種行政の申請手続きなどをして帰れるように同じエリア内に固めました。私も夫もフルタイムで働いていて、子どもも小さかったので、時間の効率化を最優先に環境を整えたのです。

1回の訪問ですべての用事を済ませられるよう、1本の幹線道路近辺の病院や施設を利用しました
1回の訪問ですべての用事を済ませられるよう、1本の幹線道路近辺の病院や施設を利用しました

両親と兄が相次いで入退院を繰り返す

 16年に89歳だった母の体調が悪化、薬の量も増えて自己管理が難しいので医師の勧めで施設に入れました。父はまだ歩ける状態だったので、私が付き添わなくても父が1人で母に会いに行けるように実家の近くの施設を選びました。料金は当初の想定より少し高かったけれど、昔から慣れ親しんだエリアで安心感がありました。

 17年の梅雨の頃、母が脳梗塞で入院し数週間後に退院しましたが、身内が訪ねても見分けられない状態になりました。秋、今度は父が大腿骨を骨折して入院し、退院後に1人暮らしは難しいので母と同じ施設に入居することにしました。

 実はこの時期、両親と兄が相次いで入院しました。父は骨折のあと体調不良で入院。数日で退院することになり、私が朝病院に行って退院手続きをして、不要な荷物を持ってそのまま会社にいくつもりが、午後に今度は母が骨折したと連絡がきて、また病院に戻るようなこともありました。母は退院後に父と同じ施設に戻りましたが、19年末に他界しました。

 同じ19年に兄が再び倒れ、歩くことができなくなったり嚥下(えんげ)機能が下がったりしてパーキンソン病併発と診断されました。サ高住では対応が難しくなったため、ケアマネや病院と相談して養護施設に移し、それ以降兄の状態は落ち着いています。

連載「仕事、ときどき介護する」では、皆さんの介護体験を募集しています。男女は問いません。実名は伏せて掲載いたします。取材にご協力いただける方は、こちらのフォームからご応募ください。