多くの人がいつかは向き合う介護。一人ひとり状況も悩みごとも違っても、話をしたり聞いたりすることで心が軽くなることも。読者の実際の体験や思いを聞きます。今回体験を話してくれたのは、両親を介護する七海さん。けがをきっかけに母親は認知症を発症し、在宅介護は限界に。そのときの七海さんの決断は…。

七海さん 49歳 フリーの翻訳家 夫と二人暮らし。神奈川県在住。
東京都内の実家で80代の両親が二人暮らし。小規模多機能型居宅介護のサービスを利用しながら七海さんが一人で在宅介護中。父は要介護3、母は要介護5。きょうだいは一つ年下の妹が一人。

介護のはじまり

母が転倒、両親二人の暮らしは崩壊

 親を本格的に介護するようになって1年半。「介護は突然やってくる」というのは、その通りだと思います。事前に積極的に情報を集めて、両親の体調変化にも気を配り、隔週ペースぐらいで実家に帰っていた私は、こんなことになるとは思っていませんでした。

 父は短期記憶が保持できない認知症で、10年ほど前に診断されてから緩やかに進行し要介護1を長くキープしていましたが、2018年に要介護2、2020年に要介護3になりました。

 足腰は丈夫だったので、だいぶ前に脊椎を骨折した母に代わって買い物を父が受け持ち、2人で支え合って暮らしていました。一方、母は認知症はありませんでしたが要支援2と要介護1を行ったり来たりしていました。

転倒による頭部強打で母が認知症に

 2人の生活が一変したのは、数年前の母の転倒がきっかけでした。室内の僅かな段差に足をひっかけて、頭から転倒。頭部から大量に出血して意識を失い、救急車で病院に運ばれました。幸い命に別条はありませんでしたが、もともと悪かった視力がさらに低下して現在はほとんど目が見えません。

 母は、転倒した日からリビングルームからトイレに行くのもおぼつかないほどに歩けなくなったので、ケアマネジャー(以下ケアマネ)に相談して介護保険における住宅改修限度額の20万円以内に収まる範囲で、廊下やトイレに手すりやポールを設置しました(自己負担は1割)。

 神奈川県内に暮らす私が実家に頻繁に泊まりに行くようになり、母のベッド横のソファに寝ながら見守ることも増えました。それでも、母は1日に3回、4回と転倒をし続けました。