多くの人がいつかは向き合う介護。一人ひとり状況も悩みごとも違っても、話をしたり聞いたりすることで心が軽くなることも。がんの転移や再発を繰り返した母の余命宣告を受け、まきこさんは最期の時間を家族や友人と過ごせる環境を整えます。やりきったといえるみとりのために、まきこさんと家族が全力で取り組んだ先にあったのは、家族の強い絆でした。

(上)母の余命宣告 気持ちを隠し「普段通り」接すると決めた
(下)施設で最期の面会やオンライン葬儀も大事なグリーフケア ←今回はココ

まきこさん(仮名) 41歳 会社員
東京都内で夫と5歳の子どもと3人で生活。母が腎臓病を発病、その後肺がんにかかり脳への転移が見つかる。短期の入院を繰り返しながら、都内の実家で在宅療養を続けていた。兄が母と同居していたが多忙のため、介護サービスをフル活用してチームで介護を行う。

最期の時間の過ごし方

面会を許可してくれる施設を探し出す

24時間ケアのため最高の設備がある施設に入所

 自宅療養を続けていた母に、2021年11月に再びてんかん発作が起きました。その頃はヘルパーさんには1日4回、訪問看護師、家政婦のほかに訪問マッサージも来てもらっていました。

 母はお正月が好きなので、「今年は豪華なおせちを頼もうね」と準備していたのですが、12月下旬に肺がんが広がったと分かり、翌日てんかんを起こし、意識障害の一種であるせん妄状態になりました。24時間のケアが必要になったので、区内の施設に入所することにしました。

 1カ月に50万円ほどかかりますが、在宅でも同じくらいかかっていたので、最高の設備のあるところを選びました。コロナ禍で家族も面会できない施設が多い中、ここは猫を連れて行くのもOK、ワクチン未接種の5歳の子どもも一緒に部屋に入れるのが決め手でした。

 せん妄状態なので、母は「家族にだまされてここに入れられている」と言ったり、私たちに「ここは危ないから早く逃げなさい」と言ったりしました。そして見慣れない場所に連れてこられたことで、薬を飲むことを拒否するようになってしまいました。

葬儀の様子をオンラインで身近な人に配信

 SNSで、「これが最後なので、お葬式だと思って会いにきてください」と発信して、親戚や親しい友人たちも来てくれてお別れすることができました。結局、施設に移って20日ほどで母は永眠しました。

 コロナ禍で葬儀もできないと思っていたのですが、残された人たち、お世話になった人のためにお別れできる場をつくろうと、オンラインで葬儀の様子を配信することにしました。身近な関係者にリンク先を送り、家族・親戚のグループラインでも中継して100人以上が母とお別れをすることができました。

葬儀の様子をオンラインでつないで、友人や親戚にシェアしました。コロナ禍でも多くの人とお別れができたのは、残された人たちにとって大事なことでした(写真はイメージ)
葬儀の様子をオンラインでつないで、友人や親戚にシェアしました。コロナ禍でも多くの人とお別れができたのは、残された人たちにとって大事なことでした(写真はイメージ)
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