Case2 リモート環境で「業務上曖昧になっていたこと」が浮き彫りに

 外資系メーカーに勤務する田宮淳子さんも、テレワークになったことで業務の効率化が実現したと話します。スマートフォンに用いられる高周波フィルターと呼ばれる電子部品を製造している会社で、田宮さんは米国本社や国内外の工場とコミュニケーションを取りながら製造工程をマネジメントするグループに勤務。3月の初めからマネジャーの田宮さんを含め、チームメンバー4人全員が在宅勤務に移行しました。

 国内外への出張が多く、VPN接続(社外からインターネット経由で社内ネットワークにアクセスできるようにすること)やスマートフォンの貸与といった物理的な環境は以前から整っていましたが、最初からテレワークをスムーズに実践できたわけではなかったそうです。

オフィスと同じ感覚でテレワークを始めたら、問題が発生

 「メンバーはみんな真面目なので、姿が見えなくても仕事は変わりなくやるだろうと、最初はオフィスにいるときと同じようにマネジメントしていました。でもそのうち、『これはやってくれているだろう』と思っていた業務を誰もやっていない、みたいなことが起き始めたんですね。オフィスではしょっちゅう会話できるので、そこまで進捗をきっちり把握しなくても、話の内容から今何をやっているかも分かったし、急ぎの案件が発生したらすぐに集まるといったこともしていました。今思うと、誰がやるのか明確でない仕事があったり、優先順位の付け方が、私が考えているのと当人とで一致していなかったりしたんですね。それがリモート環境で明らかになりました」

 他のチームの中にはテレワークになってから2時間おきに部下に進捗報告をさせているところもありましたが、さすがにそれは管理しすぎだと思った田宮さんは1日2回、業務の報告をしてもらうことに。各自メールチェックや急ぎの用件が一通り落ち着いた昼前に、その日必ずやるべきことを書いて送ってもらい、終業前に進捗報告を受けることにしました。

 「このやり方にしてから業務の漏れがなくなり、優先順位も教えてあげられるようになったので、残業が減りました」

 業務報告はMicrosoft Teamsで行い、チーム内で共有されています。これがメンバー間に予想外のいい効果を生んでいると田宮さんは感じています。

――(下)の記事「読者が実感『テレワークでチームの士気がより高まった』」に続きます。

取材・文/谷口絵美(日経ARIA編集部) 写真/PIXTA