先が見えない不安、イライラ。新型コロナ危機に直面し、多くの人がストレスを抱え、消耗した状態にあります。不安な心理状態のケアについて、心理カウンセラーの下園壮太さんに聞いたインタビュー記事を、『日経ヘルス』の最新号から紹介します。

「不安」という感情の正体を知ることが大切

 私は陸上自衛隊で心理教官として20年間、隊員たちの心のケアに携わってきました。心理教官は、被災地などの過酷な環境で任務を行う隊員たちが、パフォーマンスを維持するための心理的アドバイスを行うのが仕事です。そして、新型コロナという危機は、まさに“有事”であり、「不安」という大変なストレスをもたらしています。

 リモートワーク、休業、子どもの休校などの環境変化、日々更新される情報に振り回される負担感、経済的心配──誰もが不安によって疲れをためています。この状況でいかに心の安定を維持するか、というテーマを考えるとき、「不安」という感情の正体を知ることがまずは大切です。

リモートワーク、休業、子どもの休校などの環境変化、日々更新される情報に振り回される負担感、経済的心配──誰もが不安によって疲れをためています
リモートワーク、休業、子どもの休校などの環境変化、日々更新される情報に振り回される負担感、経済的心配──誰もが不安によって疲れをためています

 私は、「すべての感情は命を守るためにわき上がる」と考えています。「不安」とは、「身に迫っている危険を感じ取り、なんらかの行動を促す感情」。危険信号が入ってきたとき、素早く情報収集し、準備するか、逃げるか、あるいはじっと洞穴に閉じこもるか、といった「行動」につなげるという目的を持った感情だと理解してください。