ドラマ黄金期に青春時代を過ごしてきた「テレビっ子」なARIAさんたちに、ドラマやテレビの最新情報をお届けする本連載。今回取り上げるのは、フジテレビが「社会現象」だと自画自賛するほど異例の盛り上がりを見せているドラマ「silent」。若者だけでなく、ARIA世代もハマるその理由とは。ドラマコラムライターの田幸和歌子さんが読み解きます。

どことなく感じられる坂元裕二テイスト

 記録ずくめで異例の盛り上がりを見せている川口春奈主演のフジテレビ系木曜劇場「silent」。

 見逃し配信再生数(TVer、FOD、GYAO!の合計値)は第1話531万回、第2話567万回、第3話564万回、第4話688万回と、フジテレビの歴代最高を記録。Twitterでは初回放送から5週連続となる国内トレンド1位、第5週は世界トレンド1位となったほか、関連ワードは毎週Twitter上位をほぼ独占する状況になっている。

 ……といった類いの書き出しの記事がさまざまな媒体から量産されていることで、作品を見たことがない人の中には、関心を抱く人もいれば、逆に「メディアばかり大騒ぎしている」印象を持つ人もいるかもしれない。特にARIA読者に多い40代~50代には「若い子同士の恋愛なんて、今さら見ても」と思う人もいるだろう。

 しかし、そんな構え、警戒心から入ってもなお、「silent」を見たら心動かされる人はきっと多い。いったいなぜなのか。

「ラブストーリー」×「失聴というハンディキャップ」を描くフジテレビ系木曜劇場「silent」
「ラブストーリー」×「失聴というハンディキャップ」を描くフジテレビ系木曜劇場「silent」

 渋谷のCDショップ・タワーレコードで働く主人公・青羽紬(あおばつむぎ/川口春奈)は、8年前に突然別れを告げられた高校時代の恋人・佐倉想(目黒蓮)と再会する。しかし、紬は想が徐々に耳が聞こえにくくなる病気を患い、それが別れの原因だったことを初めて知り、そこから現在の恋人で想の親友でもあった戸川湊斗(鈴鹿央士)との関係性にも変化が生じて……というのが主なストーリー。

 若者向け恋愛ドラマに見えて、実は中高年層でもハマっている人が多い。その理由の一つには、ドラマ黄金期を知る世代が感じる「懐かしさ」がある。

 本作は「踊り場にて」で第33回フジテレビヤングシナリオ大賞を受賞した生方美久(29歳)によるオリジナル脚本だが、授賞時に「坂元裕二さんみたいに、唯一無二といわれる脚本家になりたい」と語っていたように、ナチュラルな会話や刺さるセリフに、月9ドラマ「いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう」(通称「いつ恋」2016年/フジテレビ系)や、映画『花束みたいな恋をした』(21年)などの坂元裕二テイストを感じる人が多い。