ドラマ黄金期に青春時代を過ごしてきた「テレビっ子」なARIAさんたちに、ドラマやテレビの最新情報をお届けする本連載。今回は、ドラマコラムライター田幸和歌子さんが注目する不倫ドラマ『うきわ—友達以上、不倫未満—』から浮かび上がる、現代夫婦に漂う不穏な傾向をひもといていきます。

復活の兆しを見せる「不倫ドラマ」

 2016年にユーキャン新語・流行語大賞の候補にも選出された「ゲス不倫」。そうしたの中の不倫バッシングの空気も手伝って、コンプライアンスが厳しくなったことなどから、一時は「不倫ドラマ」が減少していた。ところが、2021年の夏~秋にかけて『にぶんのいち夫婦』(テレビ東京)や『サレタガワのブルー』(毎日放送)、『ただ離婚してないだけ』(テレビ東京)など、復活の様相を呈している。

 ただし、復活の新潮流として見られる特徴は、webコミックなどの人気作品を原作としていることや、「不倫された側」の心情や復讐(ふくしゅう)を描く、エクスキューズがある作品が多いこと。その中でもドロドロ不倫とは一線を画した、頼りなくもすがすがしいドラマが、野村宗弘の漫画『うきわ』を原作に据えた『うきわ—友達以上、不倫未満—』(テレビ東京)だ。

 主演・門脇麦×共演・森山直太朗が演じるのは、お隣同士の危うい関係“サレ妻×サレ夫”である。主人公は、夫の仕事の都合で広島から上京した主婦・中山麻衣子(門脇)。二葉一(森山)は、夫の上司で、社宅の隣人であり、二人は壁1枚を隔てたベランダや早朝のゴミ出しでの会話を経て、交流を深めていく。

『うきわ—友達以上、不倫未満—』(テレビ東京)では、社宅のお隣同士の危うい関係を描く
『うきわ—友達以上、不倫未満—』(テレビ東京)では、社宅のお隣同士の危うい関係を描く

 二人の距離が縮まるきっかけは、“サレ妻×サレ夫”という共通点から。麻衣子(門脇)は毎晩帰りの遅い夫・拓也(大東駿介)のスマホに表示された登録名「車修理110番」からの「今夜もうちに来ますか?(ハート)」というメッセージで、夫の浮気を知る。

 海辺でプロポーズされた思い出がよみがえり、その海に溺れる自分が心象風景として映し出される。そこに投げられたのが「うきわ」だ。パートナーを暗い海の底に突き落とす「うわき」と、そこから浮かび上がるためのよすがとなる「うきわ」――。「似てますよね、うわきとうきわ」というのは、麻衣子のつぶやきだ。