ドラマ黄金期に青春時代を過ごしてきた「テレビっ子」なARIAさんたちに、ドラマやテレビの最新情報をお届けする本連載。今回取り上げるのは、2022年夏のNHKドラマ『空白を満たしなさい』。阿部サダヲ、柄本佑、鈴木杏といった演技巧者をそろえ、「怖すぎる」「気持ち悪い!」との声が続出する話題作に込められたメッセージを、ドラマコラムライター田幸和歌子さんが読み解きます。

平野啓一郎の同名長編小説が原作

 長引く新型コロナウイルス禍で社会が疲弊し、体調や精神面で不調を来している人が多い今、ぜひとも見ておきたいドラマがある。

 平野啓一郎の同名長編小説を原作に据え、柄本佑が主演を務めるドラマ『空白を満たしなさい』(2022年6月25日より全5回放送)だ。

 本作は、3年前に身に覚えのない死を遂げた主人公・徹生(柄本佑)が、ある日突然「復生者」として生き返り、なぜ自分が死んだのか、その答えを探していくヒューマンサスペンス。「さまざまな理由から死亡したが、よみがえった人間=復生者」という設定に、ファンタジーやSFテイストの感動物語を予想して見ると、主人公を取り巻くしんどい状況や、息苦しさに面食らう。

 「コロナ禍の今見ておきたい」理由は、口当たりの良い優しさや明るさ、安直な安心感、楽観的希望を与えてくれるからではない。それどころか、初回放送時には、ホラー作品を見るかのように、キーパーソンを演じる阿部サダヲに対して「怖すぎる」「気持ち悪すぎる」「ヤバイ」などの声がSNSなどに続出していたほどだ。

柄本佑が主演を務めるヒューマンサスペンスドラマ『空白を満たしなさい』(NHK)
柄本佑が主演を務めるヒューマンサスペンスドラマ『空白を満たしなさい』(NHK)