ドラマ黄金期に青春時代を過ごしてきた「テレビっ子」なARIAさんたちに、ドラマやテレビの最新情報をお届けする本連載。今回は、ドラマコラムライター田幸和歌子さんが、『モテキ』や『孤独のグルメ』など数々のヒット作を世に輩出してきたテレビ東京の阿部真士プロデューサーにインタビュー。最新作『シェフは名探偵』の制作の裏側に迫ります。

西島秀俊を押さえてから企画を通す

 ジェーン・スーのエッセーを原作に据え、吉田羊×國村隼のW主演で家族の愛憎物語を描いた『生きるとか死ぬとか父親とか』(テレビ東京)が、 2021年6月26日で終了してしまった。40代~50代の女性にとっては親子や家族、友人、仕事、さらには自分自身と向き合うきっかけにもなる秀作だった。

 しかし、終盤に向かい、寂しい思いが募る中、同じテレビ東京でスタートしたのが、西島秀俊主演の『シェフは名探偵』(月曜午後11時6分~)である。シェフ・三舟を演じる西島をはじめとしてイケオジがいて、おいしそうな料理があって、「グルメミステリー」なのに、描かれているのは家族や友人、仲間、そして「心」だ。しかも、驚くべきことに、全く異なる作風のこの2作は、同じチーフプロデューサー・阿部真士氏が手掛けている作品なのだ。

西島秀俊主演のグルメミステリー『シェフは名探偵』(テレビ東京)
西島秀俊主演のグルメミステリー『シェフは名探偵』(テレビ東京)

『モテキ』『みんな!エスパーだよ!』『孤独のグルメ』など、数々の人気作品を手掛けてきた

 阿部氏はこれまで『モテキ』『みんな!エスパーだよ!』『鈴木先生』『孤独のグルメ』『娘の結婚』『アノニマス〜警視庁“指殺人”対策室〜』など、実に多種多様な作品を手掛けてきた人でもある。そこで、異なるアプローチで立て続けに人の心をつかむドラマを作り続けてきた、その極意について話を聞いた。

 「『シェフは名探偵』の企画は4~5年前にスタートしていて、最初は制作会社さんから金曜8時枠でご提案をいただいたんですが、そのときは成立せず。それで月曜夜11時台の『ドラマプレミア23』枠でもう1回チャレンジしたいと思い、再度企画書を掘りおこしてみたんです。改めて調べたら、単行本が3作まで出ていて、扱っているテーマもトランスジェンダーの問題などを含め、さらに現代的になっていたんです。

 そこで、誰もが納得する決定打として、新型コロナ禍で作品が延期したり中止になったりと、業界中がパニックになっている隙間でタイミング良く西島秀俊さんを主演で押さえられ、提案し直しました」(阿部真士氏 以下同)