切実なリアルに迫る『生きるとか死ぬとか父親とか』

 まずは、吉田羊×國村隼のW主演により、自由奔放な父と、それに振り回される中年の娘の家族の愛憎物語を描く『生きるとか死ぬとか父親とか』(テレビ東京)。原作は、ラジオパーソナリティーでコラムニスト、作詞家と、多彩な顔を持つ「独身のカリスマ」ジェーン・スーのエッセーで、吉田羊がジェーン・スーをモデルにした主人公・蒲原トキコを演じている。

 冒頭とラストでは毎回、トッキーこと蒲原トキコ(吉田)のラジオ番組『トッキーとヒトトキ』のお悩み相談コーナーに寄せられた女性たちの悩みが紹介されるのだが、「結婚した友達の話を聞く限り、結婚生活が楽しそうに思えない。自由や楽しさを手放すことになるのではないか」「仕事一筋でやってきた34歳女性が、1人で生きていくことを覚悟して老後のためにマンションを購入したら、最近彼氏ができた。マンションを自力で買ったとは全く思っていない彼に、真実を打ち明けるべきか」などなど、身の回りで聞いたことがありそうな悩みが紹介される。

 ドキッとするほどリアルだと思ったら、「ラジオの相談はほとんど実際に過去のスーさんのラジオであったものです。それをスーさんに当時の回答をさらに今ならこう答えると監修していただきました」(プロデューサー・佐久間宣行氏Twitterより)というから、納得だ。

 そうした悩みに対するトキコの回答は心地良く、背中を押される気持ちになるが、それでいて、父・哲也(國村)に対しては弱い。20年前に母を亡くしてから、「2度ほど同居を試みたがダメだった」が、ときどき外食を一緒にする関係にまで復活した父と娘。奔放な父をついつい甘やかしてしまうところがありつつ、過去の父の女性関係を今でも許せず、当時の記憶がしばしばよみがえる。家族だから全部受け入れられるわけじゃない。いや、家族だからこそ、許せないことがある。肉親ならではの愛憎や、年齢を重ねることで変わっていく感情や関係性、老いや死などは、どれもこれも我が事でしかない切実な問題だ。