「社長、それはおかしいと思います!」

黒田 大会議のプレゼンテーションって、みんなが「聞かねばならぬ」「せねばならぬ」というモードに陥りがちだと思うんです。でも会議の目的は、あくまで社員に理解して、行動に移してもらうことにある。そう考えると、どんなに長くやっても、大事なことは一つか二つくらいしかなくて、あとは情報として知っておいてもらったほうがいいというレベルなんです。

 ただ、その一つか二つについては、記憶に残し、行動に移してもらわなければならない。それで、「あのメッセージのときはこういう寸劇だったな」という記憶になってもらえたらと考え、芸人さんがやるような寸劇を、仕込みで社員にやってもらったのです。

川島 どんなシナリオだったのですか。

黒田 僕の話が一通り終わった後、女性社員が「質問があります!」と言って立ち上がる。うちはもともと、そういう社風じゃないですから、まず社員がびっくりする。その女性が「社長、それはおかしいと思います!」と言い出し、「えっ」と僕が答えると、檀上に上がってきてマイクを持って「社長が言っていることは、ここの説明がないと納得がいきません!」みたいなことを言うのです。

 すると別のところから、今度は男性が「はい!」と手を挙げて立ち上がり、「キミは分かっていないけど、社長が言いたかったことはこういうことなんだ」と反論し、二人がけんかみたいに議論を交わす。最後に仲介役の社員が出てきて、「まぁまぁ」となだめる。「ということで」と終わるストーリーです。

川島 シナリオは誰が考えたのですか?

黒田 僕が何か面白い寸劇をやってほしいいうオーダーを出して、社員に考えてもらいました。そしたらこれがウケたし、意外と効果的だったのです。

川島 それは記憶に残りますね。笑いが生まれ、空気がやわらぐシーンって、仕事でもプライベートでも楽しいことですから。やはりトップの知恵です! さて後半は、そのあたりの知恵や工夫について、もっとぐいぐい聞いてみたいと思います。

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取材・文/川島蓉子 写真/洞澤佐智子