コロナ禍で自分も社員も変化を恐れなくなった

黒田 「社長のお題のために何かしなくてはいけない」ではなく、「自分のために会社をどうしたいのか」、それが今回できてきたように思うのです。コロナがある意味、契機を作ってくれたと言えますね。

川島 えっ、それは興味深いです。

黒田 コロナ禍が、個人の価値観を考えるきっかけになったと思うのです。例えば、目の前の売り上げとか利益だけのために仕事していてもあまり意味がないとか、2時間くらいかけて通勤して仕事をして終わりではなく、自分は何をするのか、したいのかをはっきりさせないと働く意味がないとか、気づくところがあった。だから2030年に向けたビジョンについても、「自分事」として参画するようになったのではないかと。

川島 それはあるかもしれません。このコロナ禍で仕事とは何か、家族とは何か、暮らしとは何か。誰もが自分のこととして考えざるを得ませんでしたから。

黒田 僕も社員も、良い意味で変化を恐れなくなったし、変化に向けて良い知恵を積極的に出し、受け入れるようになったと思います。

川島 以前から「社員は自分から発想して自分で仕事してほしい」とおっしゃっていましたが、大半の経営トップは同じ悩みを抱えていて、これがなかなかうまくいかない。でもコクヨは、段階的に変わってきていると思うのです。かつては英邦さんも、パワーポイントにぎっしりの書類を作って、全社員に向けて数時間レクチャーするみたいなことをやっていましたが、それも変えましたよね。

黒田 かなり熱心にやっていました(笑)。社長とか担当役員とかが、一生懸命しゃべって、それを聞いている社員が一生懸命ノートを取る。それで理解したと思っていた節があったのですが、あるとき、変えなくてはと思ったのです。

川島 全社員が集まる会議を、あえてお笑いっぽい寸劇仕立てにしたというお話、興味深かったです。そんなことやっている会社ってあまりないかも。