「働く」って何ですか――働き方改革やワーク・ライフ・バランスといった旗印の下で「働く」が揺らぐ今、改めてこの根源的な問いの答えを考えてみませんか? ifs未来研究所所長の川島蓉子さんが、企業のトップに「あなたにとって働くって何ですか?」をぶつけます。今回は特別編。キャンプ用品のハイエンド市場を切り開いたアウトドア総合メーカー「スノーピーク」の会長・山井太さん、2020年3月に32歳で社長に就任した山井梨沙さんの親子リレーでお話をお聞きします。

(上)スノーピーク会長 20代で描いた60歳までの人生計画
(下)スノーピーク山井梨沙 父はサメ型、私はイルカ型の社長 ←今回はココ

絶対に信念を曲げず、貫く父の強さを見て

川島蓉子さん(以下、敬称略) 最初にお会いしたのは、梨沙さんが24歳のときにスノーピークでアパレル事業を立ち上げて間もなくのこと。今は会長になられたお父様(山井太会長)から紹介され、若いのに新規事業を立ち上げると聞いてびっくりでした。後から、あれだけしっかり者なのは、お父様の英才教育もすごかったのだろうと想像したりして。

山井梨沙さん(以下、敬称略) 父は何しろ猛烈な仕事人間で、仕事が150%、家庭がマイナス50%くらいの感じでした(笑)。幼い頃に父と過ごした記憶はそれほど多くなく、英才教育みたいなものは全くなかったですね。

川島 お父様のお話では、普段は忙しいので、家族との時間を過ごせなかったけれど、週末に家族でキャンプに行く時は、設営から料理まで全部自分がやっていたと。そういう原体験が、梨沙さんを「キャンプ」や「自然」へと向かわせ、もしかするとリーダーシップ教育みたいになったのかもと、勝手に思っていました。

山井 父が私たちの面倒を見てくれたというよりは、兄弟4人で川遊びをしていて、そのかたわらで父が釣りをしていることが多かったですね(笑)。キャンプの楽しさは幼い頃の濃い記憶になっています。

川島 外野の勝手な想像でした。ごめんなさい。

山井 それよりは、スノーピークに入社してから、多くの決断をしながら、会社の方向性を示していく経営トップとしての姿を目の当たりにして、父を見る目が大きく変わりましたね。

スノーピーク代表取締役社長・山井梨沙さん
スノーピーク代表取締役社長・山井梨沙さん
1987年、新潟県生まれ。文化ファッション大学院大学で服作り、洋服文化を専攻し、国内アパレルブランドに約1年間勤務。2012年、スノーピークに入社し、アパレル事業を立ち上げる。副社長などを経て2020年3月より現職

川島 例えばどういうところですか。

山井 経営トップとして、さまざまな指針を出していくわけですが、将来に向けた大きな流れを視野に入れ、かつ周囲の状況を多面的にとらえた上で、大胆かつ迅速に判断し、遂行していく。しかも、スノーピークの本質と信念を絶対に曲げずに、貫いていく強さには尋常ではないものがある。短期ではなく長期的な展望のもと、継続的に成果を出していくために必要な手を打っていく。そういうところは本当にすごいと思っています。

川島 梨沙さんは、アパレル事業をゼロから立ち上げ、年間売り上げ約20億円の規模にまで大きくして今にいたる道を切り開いたわけですが、お父様のバックアップとか、指導は何かあったのですか?