「働く」って何ですか――働き方改革やワーク・ライフ・バランスといった旗印の下で「働く」が揺らぐ今、改めてこの根源的な問いの答えを考えてみませんか? ifs未来研究所所長の川島蓉子さんが、企業のトップに「あなたにとって働くって何ですか?」をぶつけます。今回は、アウトドアブランド「ザ・ノース・フェイス(THE NORTH FACE)」の成長をけん引し、2020年4月にゴールドウイン社長に就任した渡辺貴生さんに聞きました。
(上)ザ・ノース・フェイス成長の立役者が川久保玲に得た刺激 ←今回はココ
(下)ゴールドウイン社長 1歩先のマーケットをデザインする
同じことを絶対に繰り返さない姿勢に憧れた
川島蓉子さん(以下、敬称略) 渡辺さんは、いつも仕事のことを楽しそうに語っていらっしゃいます。特に、社外とつながって新しいことを興したエピソードの数々は、ご自身がワクワクしている様子が伝わってきてとてもリアル。そんな中、今までで最も刺激を受けた人やコトは何ですか?
渡辺貴生さん(以下、敬称略) 数え切れないほどの出会いがあり、多くの企業とコラボレーションもしてきたので、一つに絞るのはなかなか難しいのですが、仕事人生の中でずっと刺激を受け続けてきた方というと、川久保玲さんです。
川島 えっ、コム デ ギャルソン(COMME des GARCONS)の川久保さんですか。どういうところに刺激を受けたのでしょう?
渡辺 川久保さんは、やりたいことが世の中になければ自分で作っていく。同じことを絶対に繰り返さず、いつもゼロから新しいことに挑戦している。そういう姿勢を、若い頃からずっと仰ぎ見てきたのです。
川島 そもそも渡辺さんは、若い頃からファッション好きで、この道に進もうと思っていたのですか。
渡辺 いえ。父が司法書士で「法律を学びなさい」と言っていたので、大学は法学部を選びました。僕も法学部で学ぶ内容には興味を持ち、2年生までは真面目に勉強していたのですが、3年生からはバカみたいに遊んでいました。
川島 何をして遊んでいたのですか。
渡辺 雑誌の『ポパイ』(マガジンハウス)が創刊されたのが1976年のこと。僕は高校の時からスケートボードをやっていたこともあって、『ポパイ』に載っている米国の西海岸のライフスタイルにすっかりかぶれていました。ファッションはもちろん、音楽、アート、スポーツなどから、ものすごい刺激を受けたのです。