「働く」って何ですか――働き方改革やワーク・ライフ・バランスといった旗印の下で「働く」が揺らぐ今、改めてこの根源的な問いの答えを考えてみませんか? ifs未来研究所所長の川島蓉子さんが、企業のトップに「あなたにとって働くって何ですか?」をぶつけます。今回は、アイウエアブランド「ジンズ」CEO・田中仁さんに聞きました。
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(下)ジンズ田中CEO 9割失敗すると学んでも商売に挑んだ
「どん底」で出会ったファストリ柳井氏
川島蓉子さん(以下、敬称略) 田中さんの仕事ぶりをはたから見ていると、ジンズはどんどん成長しているし、地元である群馬県を活性化する活動やベンチャー支援にも積極的で、かっこいいと仰ぎ見るばかり。そんな田中さんが、働いていて落ち込むことってあるのですか?
田中仁さん(以下、敬称略) もちろんあります。そんなに世の中、甘くないですから(笑)。
川島 成功した方はたいていそうおっしゃるのですが、どうも信じられない感じなんです。落ち込んだエピソードを、何か教えてください。
田中 ファーストリテイリングの柳井正社長にお会いしたときのことは、今でも忘れられません。初対面だったのですが「君は今のままでは駄目だ」と言われたのです。
川島 えっ、面と向かって本当にそう言われたのですか?
田中 直接言葉にされたわけではないのですが、そのときの柳井さんの言動から、そういうことをおっしゃっていると感じました。今から10年以上前、2008年のクリスマスイブのことです。2006年にジンズが上場して初年度は順調だったのですが、2008年にはリーマン・ショックをはじめ色々な問題が重なり、業績も株価も低迷。上場廃止になるかもしれないくらいの厳しい状況でした。これ以上失敗したくないという思いから「これをしよう、でも別の方がいいかも」とためらって、大きな決断を下せないでいたのです。
川島 苦しい時期に柳井さんにお会いになったのですね。