「働く」って何ですか――「就職活動以来、考えたことがない」という方、「そんな青臭い質問しないで」とお思いの方もいるでしょう。働き方改革やワーク・ライフ・バランスといった旗印の下で「働く」が揺らぐ今、改めてこの根源的な問いの答えを考えてみませんか? ifs未来研究所所長の川島蓉子さんが、いろいろな企業のトップに「あなたにとって働くって何ですか?」をぶつけます。

(上)DEAN & DELUCA創業者の志に学ぶ 横川正紀
(下)DEAN & DELUCA コロナ後は「共感の先」へ ←今回はココ

 今回は、前回に続き、ウェルカムグループの代表取締役を務める横川正紀さんのお話をお聞きします。(上)では、仕事は「まね」ではなく「学び」と「独自性」が大事ということについて、若い頃の「ディーン&デルーカ(DEAN & DELUCA)」(以下、D&D)における失敗も含めたエピソードをお聞きしました。(下)では、仕事の醍醐味や、横川さんにとっての働くことの意味について川島蓉子さんが迫ります。

チームの信用は「小さなこと」から得る

川島蓉子(以下、敬称略) 横川さんにとって、仕事の面白さは、どこにあるのでしょうか?

横川正紀(以下、敬称略) 一緒に仕事をするチームの中で、ぐっと信用が深まり、周囲に広がっていったときですね。

川島 ということは、代表である横川さんがチームリーダーでも、最初からチームのみんなが信用し合ってやっているわけではないということですか?(笑)

横川 僕が手掛けるのは、今はうまくいっていないけれど、可能性があるのでこのままではもったいない、という仕事が多いんです。ですので、最初の段階では、まだうまくいくかどうか分からない。「こうしてみよう」と言ったところで、「それで本当にうまくいくのかな」と疑問や不安を感じるメンバーもいるんです。

川島 そういうときにチームの信用を得るのは難しそう。横川さんはどうするのですか?

横川 まずは「小さなこと」から始めます。僕もチームの一員となって、小さな成功体験を共有することにしています。チームのメンバーが成功を体感してくれれば、その人たちが周囲に伝えてくれる。そうやってさざ波のように広がっていくのが心からうれしいし、そこに仕事の醍醐味があると思うのです。

川島 一人で成し遂げたときより、チームで達成して「やったね!」と言い合える瞬間って記憶の中に残るものです。そのやり方、誰かに教えてもらったのですか?

横川 自己流で試しながら行き着いた感があります。が、おやじ(注:すかいらーくグループ創業者の一人・横川紀夫氏)のやり方を見て育った影響もあるような気がします。

川島 経営者としてのお父さまの影響は大きいですか?

ウェルカムグループ代表の横川正紀さん。2000年にジョージズファニチュア(現ウェルカム)を設立、DEAN & DELUCAやCIBONEなど食とデザインの2つの軸で良質なライフスタイルを提案するブランドを多数展開。その経験を生かし、商業施設やホテルのプロデュース、官民を超えた街づくりや地域活性のコミュニティーづくりへと活動の幅を広げている。武蔵野美術大学非常勤講師
ウェルカムグループ代表の横川正紀さん。2000年にジョージズファニチュア(現ウェルカム)を設立、DEAN & DELUCAやCIBONEなど食とデザインの2つの軸で良質なライフスタイルを提案するブランドを多数展開。その経験を生かし、商業施設やホテルのプロデュース、官民を超えた街づくりや地域活性のコミュニティーづくりへと活動の幅を広げている。武蔵野美術大学非常勤講師