コロナ禍で人と人、人とものとのリアルな接点が減り、コミュニケーションの形が大きく変わろうとしています。さらには急速な人口減によって、ものが売れない、売り上げが伸びない時代に突入しつつある今、必要なのは「ファンをベースに考えること」と佐藤尚之さんは言います。ファンベースとは何か、売り上げ拡大のためにファンベースにどう取り組めばいいのか。いよいよ最終回です。

(1)「今はネット時代」という誤解 ファンベースが必要な訳
(2)ファンベースで重視すべきはファンからの愛されポイント
(3)ファンベースを強化する3要素は「共感、愛着、信頼」 ←今回はココ

バラ10本に対抗するのは、バラ15本?

編集部(以下、略) ファンミーティングでファンの姿が見えてきたら、次のステップとしてファンベースの施策を進めるためにすべきことは何でしょう。

佐藤尚之さん(以下、佐藤) 残念なことに多くの方がファンベースをテクニックと勘違いしています。各社の成功事例は参考にはなりますが、それをまねしても、当てはまることもあればまるで見当違いなこともある。にもかかわらず、「どういう手を使えば、ファンは喜びますか?」と、まるで何かノウハウがあるかのように聞く人が多い。それはあなたのファン次第なんです。それが分からずに、事例ばかりを知りたがるんですね。

 ファンミーティングで「ファンがどこを好きで何を喜んでくれるのか」を知った次に大事なのは、ファンからの支持を強くしていくこと。そのために重要なのは、「共感」「愛着」「信頼」の3つを地道に強くしていくこと。テクニックやマニュアルはないんです。感情は一人ひとり違うので、ファンをよく観察して、ふさわしいやり方をその人に合わせて考えることです。例えば夫や恋人を喜ばせたいときに、おいしいレストランを予約する人もいれば、花をプレゼントする人もいるでしょう。何をするかを決めるには相手をよく見て、喜ぶツボを知る必要があるのです。

 アップルの創業者、スティーブ・ジョブズがこんなことを言っています。「女性を口説こうと思ったとき、ライバルがバラの花を10本贈ったら君は15本贈るのかい?」と。そう思った時点で負けで、「ライバルが何をしようと関係ない。その女性が何を本当に望んでいるのかを、見極めることが重要なんだ」と。

佐藤尚之、津田匡保著『ファンベースなひとたち』(日経BP)より
佐藤尚之、津田匡保著『ファンベースなひとたち』(日経BP)より