コロナ禍で人と人、人とものとのリアルな接点が減り、コミュニケーションの形が大きく変わろうとしています。さらには急速な人口減によって、ものが売れない、売り上げが伸びない時代に突入しつつある今、必要なのは「ファンをベースに考えること」と佐藤尚之さんは言います。ファンベースとは何か、売り上げ拡大のためにファンベースにどう取り組めばいいのか。全3回でお届けします。

(1)「今はネット時代」という誤解 ファンベースが必要な訳
(2)ファンベースで重視すべきはファンからの愛されポイント ←今回はココ
(3)ファンベースを強化する3要素は「共感、愛着、信頼」

「ファンの熱量を上げる」ポイントは3つ

編集部(以下、略) 前回は、ファンからの言葉は、同じ価値観を持つ類友に熱く深く伝わっていくというお話でした。

佐藤尚之さん(以下、佐藤) コロナ禍においてはちょっと不謹慎な例示になるかもしれませんが、ファンって「感染者」なんですね。感染を自分の小さなクラスター(集団)に持ち込み、そこでそのファンの熱に感染した人がまた別のクラスターに持ち込む。ファンの熱量を上げていくと周りにどんどん感染が広がっていくわけです。

―― ファンの熱量を上げていくためには、何から始めたらいいのでしょう。

佐藤 「イイトコロを伸ばす」「機能価値+情緒価値」「支持基盤を固める」という3つのポイントがあります。

 企業は、新しい顧客に振り向いてもらうために、足りない部分や悪いところを直さなければと考えがちですが、大事なのは、今買ってくれているファンなのです。今買ってくれていない顧客のために悪いところを直すのではなく、今買ってくれているファンが愛してくれている「イイトコロを伸ばす」のがとても大切なポイントですね。

 2つ目は「機能価値+情緒価値」。現在のような超成熟市場では、独自性を出して他社との差別化を図っても、機能面ではすぐに後発企業に研究されて追随されます。まねをされるというか、コピーされるわけですね。そして付加価値を付けられたり価格競争に持ち込まれたりして陳腐化して行きます。機能価値だけでは闘えないのです。だからこそ、好きという「情緒価値」を付けないといけない。情緒価値(=感情)は簡単にはコピーできません。そこを大切にした方がいい。

 そして、3つ目は「支持基盤を固める」。これは前回もお話した通り、20%のファンが80%の売り上げを支えてくれているのですから、まずファンという支持基盤(ベース)を固めるのが、この「先が見えない時代」においてとても大切になるということです。これこそが「ファンベース」のベースですね。ファンマーケティングでもファンビジネスでもなく、ファンベースと呼んでいる由来はここです。では「イイトコロ」や「情緒価値」や「支持基盤」を知るためにどうすべきか。やはり、ファンに聴くのが一番の手です。