コロナ禍で人と人、人とものとのリアルな接点が減り、コミュニケーションの形が大きく変わろうとしています。さらには急速な人口減によって、ものが売れない、売り上げが伸びない時代に突入しつつある今、必要なのは「ファンをベースに考えること」と佐藤尚之さんは言います。ファンベースとは何か、売り上げ拡大のためにファンベースにどう取り組めばいいのか。全3回でお届けします。

(1)「今はネット時代」という誤解 ファンベースが必要な訳 ←今回はココ
(2)ファンベースで重視すべきはファンからの愛されポイント

「今はネット時代」という誤解…実は国民の2割にしか届かない?

編集部(以下、略) 電通でコピーライターやCMプランナーとして活躍した佐藤さんが、ファンマーケティングではなく、ファンベースという考え方の重要性に気づいたきっかけは何ですか?

佐藤尚之さん(以下、佐藤) 三十数年、広告の仕事をしてきて、一度、僕は絶望したんです。そのときに見えた唯一の光明が「ファンベース」でした。後ほど詳しく説明しますが、ファンベースとは、愛してくれるファンを大切にし、そのファンをベースに考えることを意味します。

大事なのは、ファンだった?
大事なのは、ファンだった?

―― 絶望? 従来の広告手法に希望が持てなくなったということでしょうか?

佐藤 CMや新聞広告だけでなく、ネットやソーシャルメディアのプランニングも数多く手掛けてきましたが、2005年ぐらいを境に世の中に流れる情報量が爆発的に増えて、CMがヒットしても、キャンペーンが話題になっても一過性で、肝心の商品情報が届いていない、いいコンテンツを作っても見てもらえなくなっていることを実感していたのです。

―― ネットやSNSなどの情報を届けるメディアが多様化し、ECサイトなどものを売るチャネルも増えているように思いますが。

佐藤 そこにまず、大きな誤解があります。1つは今がインターネット時代である、という誤解です。日本では、「皆がネットを見ている」と考えている人が多いかもしれません。ですが、実はネットに関しては世界的にとても遅れていることを、今回のコロナ禍における対応で実感したと思います。

 まず、ネットを活用するときに「検索」を使うことが考えられますが、その「検索」をする人がとても少ない現実を知った方がいい。人口当たりの年間検索数を都道府県別に見ると、東京だけが飛び抜けて多いんですね(※1)。他地域は、東京のほぼ半分以下。つまり、みんなが検索しているという状況は東京のみ、と言ってもいい。ネット活用に関しては、言ってみれば「東京だけが別の国」といった状態です。

 日本が高齢化社会だから、つまり老人たちがネットを活用していないんでしょ、と思われるかもしれませんが、そうでもありません。世界の15歳を対象にした2018年の調査によると、「学校以外でのPCの利用時間」も、「学校以外でのインターネットの利用時間」も調査した国の中では最下位(※2)。圧倒的にITリテラシーが低いのです。

 ソーシャルメディアなら利用者が多いのではないか、と考える人もいると思います。ですが、例えば、日本におけるツイッターの月間利用者数は4500万人(ツイッター社、2017年10月公表)。一見、多いようですが、ツイッターを含むSNSの利用者のうちヘビーユーザーは22%、そしてヘビーユーザーで総利用時間の82%を占有してしまっているのです(※3)。ということは、ツイッターのヘビーユーザーは4500万人×22%=約990万人で、その人たちが総利用時間の大半を占めている。残りの1億1000万人以上の人には、ツイッター上のトレンドワードなどもほぼ届いていないとも考えられるのです。

※1/Yahoo!JAPANビッグデータレポート2015年より。Yahoo!検索、PCのみ。※2/OECD生徒の学習到達度調査「PISA2018」より。
SNSの利用者のうちヘビーユーザーは22%、そしてヘビーユーザーの利用時間シェアは82%を占めている ※3、上図/ニールセンモバイルネットビュー2016年5月、スマートフォン:ブラウザー及びアプリからの利用(LINE、SNSは動画アプリのみ)
SNSの利用者のうちヘビーユーザーは22%、そしてヘビーユーザーの利用時間シェアは82%を占めている ※3、上図/ニールセンモバイルネットビュー2016年5月、スマートフォン:ブラウザー及びアプリからの利用(LINE、SNSは動画アプリのみ)
ファンベースの基本
「パレートの法則(80:20の法則)」とは?

顧客の上位20%が売り上げの80%を占めるといった傾向
→売り上げの80%を支えてくれるファンに注目。ファンに喜んでもらえれば売り上げの底上げがされる