人は、さまざまな思い込みに左右されて、無意識のうちに自分の可能性を狭めている――。そう話すのは精神科医でマジシャンの志村祥瑚さんです。「選択肢はAかBのどちらか」「この目標を達成するのは難しい」……あなたが論理的に導き出した「正解」も、実は単なる思い込みかもしれません。目に見えない思い込みのメカニズムをマジックを通して解き明かし、自分に限界をつくらず行動するための思考法を志村さんが解説します。

(1)マジックの種明かし動画で納得! 思い込みのメカニズム
(2)挑戦し成長を続ける人は「根拠のない自信」を持っている ←今回はココ
(3)マジックで磨くメタ認知の力とアントレプレナーシップ

「バリュー」を意識すると、自分軸でぶれずに行動できる

 新体操日本代表「フェアリージャパン」の選手たちは、僕のマジックを見ているうちに、自分たちの中にある「思い込み」に気づきました。そして、「レギュラーに選ばれなくては」「金メダルを取らなくては」といった「ゴール」だけにとらわれていた思考から脱却し、自信にあふれた演技ができるように変わっていきました。

 皆さんにも、例えば仕事で「予算を達成しなければ」「このプロジェクトは絶対に成功させなければ」という思いや責任感がプレッシャーとなって、思わぬところでミスをしたり、チーム全体が萎縮したりといった経験はないでしょうか。

 人はゴールにとらわれると、常に「他人と比較した自分」「市場価値と照らし合わせた自分」になってしまって、自分軸で行動できなくなってしまいます。これを精神医学では「ゴールフォーカス思考」といいます。ゴールフォーカス思考は、慢性的なフラストレーションや、充実感のなさにつながりやすいのです。

 僕はフェアリージャパンの選手たちに、大切なのは「ゴール」ではなく、「ゴールを超えたゴール」であることを伝え、ゴールにたどり着いたとして、その先であなたがやりたいことは何なのか、と問いかけました。彼女たちは「鳥肌が立つような演技がしたい」「新体操の魅力を伝えたい」といった、自分の内から湧き出る思いを見つけ、そこへ意識を向けるようになりました。ゴールではなく、「バリュー(価値)」に根差して行動するようになったのです。

「ゴールと違って、バリューに根差して行動することには終わりがありません」(志村さん)
「ゴールと違って、バリューに根差して行動することには終わりがありません」(志村さん)

 バリューを意識すると、他者の評価や価値基準に振り回されることなく、ぶれずに行動し続けることができます。例えば保険会社の人だったら、営業成績ではなく、「人の安心安全を守る」ことを意識する。雑誌やウェブメディアをつくるチームなら、販売部数やPV(ページビュー)ではなく、「良い作品をつくる」という共通のバリューに沿って、メンバーが一丸となる。バリューを重視するとは、「過程をもっと楽しむ」ということ。売り上げやPVといった数字は通過点でしかないのです。

 僕自身も、以前はゴールにとらわれていました。