「このままこの会社にいていいのだろうか」と不安になり、「転職」の二文字が頭をよぎる…。組織の一員として働いていれば、誰しも一度は経験があるのではないでしょうか。仕事人生が長くなった今、転職はARIA世代にとっても無縁ではありません。『働くみんなの必修講義 転職学』の共著者である立教大学経営学部教授の中原淳さんとパーソル総合研究所上席主任研究員の小林祐児さんに、「転職のプロセス」を科学的なアプローチでひもとく「転職学」について学びます。最終回の講師は小林さんです。

(1)転職の8割は「不満」が動機 人はなぜ会社を辞めるのか
(2)転職難民化する「新卒で大企業、時計が止まっている人」
(3)転職に失敗はつきもの 1年でまた辞める人の口癖とは? ←今回はココ

1年以内の離職につながりやすい「入社後ショック」は?

編集部(以下、略) 希望通りの会社に転職できたものの、入社前のイメージとのギャップが大きすぎて、「こんなはずじゃなかった」とすぐに辞めてしまった、という話も聞きます。

小林祐児さん(以下、小林) 残念ながら、転職に失敗はつきものです。人生において転職する機会はそう多くありません。平均2回程度だと言われていて、ほとんどの人が「転職初心者」。前回の講義で中原先生も言っていた通り、入社後の「こんなはずじゃなかった」というリアリティーショックは避けられません。

 「聞いていたよりも手取り収入が少ない」といった話から、「残業が多い」「休日が少ない」といった過重労働系、「上司からのパワハラ」「同僚からのいじめ」といったパワハラ系、「入社前に聞いていた仕事と違う」「初日から放置され、何も教えてもらえない」といった役割喪失系まで、さまざまなものがあります。リアリティーショックの中でも、特に1年以内の離職につながりやすいのは、「職場の雰囲気が悪い」「上司の態度が高圧的」などといった、人間関係の理由です。

―― こうした理由で1年以内に離職してしまうのはなぜでしょうか? 事前に防ぐことはできませんか?

小林 リアリティーショックが起きてしまうのは、ある程度仕方ない面があります。転職活動中は、転職先の人事担当者や、転職エージェントなどからの情報に頼るしかありません。しかし、こうした転職中に出会う関係者たちが現場のリアルを100%理解しているとは限りません。チーム内の人間関係や上司のマネジメントがどうなっているかなどは、入社前に知りようがないのです。こうした理由で、事前に行うミスマッチ対策には限界があります。

―― 残念ながら入社してみないと分からないこともある……というわけですね。入社後、うまくいかないのはどんなタイプの人ですか?

小林 典型的なのは、「前の会社では……」「前職では……」と「では」「では」を連呼する「出羽守(ではのかみ)」です。転職後、何年もたっているのに、いつまでも「では」「では」言っている人、いませんか?

―― なんとなく思い当たります(笑)。「では」「では」と言わないよう気を付けるとして、入社後にうまくなじむためにいい方法はないでしょうか?

小林 転職者が新しい会社に早くなじみ、活躍できるようになるために必要な支援は4つあります。