既に世界198カ国・地域で17億7843万回を超える接種が行われた新型コロナワクチン(2021年5月28日現在)。日本でも2021年2月から始まり、医療従事者や高齢者などへ1117万回あまりの接種が行われました(2021年5月27日現在)。新型コロナワクチンに限らず、「ワクチンを打つべきか」と悩む人は少なくありません。どんなワクチンでも、大切なのはよく分からないまま過度に恐れ過ぎずに正しい知識を基に判断すること。新型コロナウイルス感染症対策分科会のメンバーである、川崎市健康安全研究所所長・岡部信彦さんに、知っておくべきワクチンの最新知識を聞きました。

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編集部(以下、略) 新型コロナウイルスによりワクチンへの関心が高まっています。新型コロナワクチンのほかにも、受けたほうが良いワクチンはあるのでしょうか?

岡部信彦さん(以下、岡部) まず、必ず受けてほしいのが「風疹ワクチン」です。妊婦が風疹に感染すると、胎児に先天性の心疾患や聴力障害、白内障、緑内障などを起こすことがあるからです。特に妊娠初期にはこうした先天性風疹症候群を起こす可能性が高くなります。風疹ワクチンは生ワクチンで接種により感染を起こすため、妊娠中には接種できないので、妊娠前にワクチンを打っておくことが大切です。

ARIA世代の男性に未接種の人が多い「風疹ワクチン」

―― 風疹ワクチンは、これから妊娠する可能性がある女性だけが受ければよいのでしょうか?

岡部 いいえ、違います。実は男性もワクチンを接種することがとても重要なのです。理由の一つは、男性が予防接種を受けずに自然感染した場合、脳炎や血小板減少性紫斑病などの合併症を起こすリスクがあること。そしてさらに重要な理由は、男性が風疹に感染すると、周囲にいる妊娠中の女性に感染させるリスクがあるためです。

 風疹ワクチンは、年代や性別により未接種の人や、接種回数が不足している人が多いワクチンです。特に現在42歳以上(1979年4月1日以前生まれ)の男性の多くは風疹ワクチンを接種していません。また、2000年4月1日以前生まれの男女も、このワクチンが任意接種だったために接種率が低く、接種した人でも十分な抗体を得るために必要な2回の接種をしていない人が少なくありません。こうした人たちにはぜひ接種してほしいと考えています。

 42~59歳の男性には、自治体から風疹の抗体検査と予防接種のクーポン券が届いていると思います。男性は自分が妊娠するわけではないため、風疹ワクチンの重要性を実感しにくいかもしれません。しかし、風疹ワクチンを接種しないことによる本当の痛みは、自分たちの次の世代に持ち越されるということをよく考えてほしいですね。夫にとって妻の言葉は響くものです。クーポンが届いたご家庭では、ぜひともご夫婦でしっかり話してワクチン接種を勧めてください。

ARIA世代は風疹ワクチン接種が足りていない
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生まれた年によって風疹ワクチンの接種状況は異なり、接種が不足している人はまだまだいる
40代、50代の男性に対して、風疹のワクチン接種を厚生労働省はリーフレットなどで呼び掛けている
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―― ARIA世代では、お子さんにヒトパピローマウイルスワクチン(HPVワクチン、いわゆる子宮頸がんワクチン)を接種させるかどうか迷っている人が多いようです。HPVワクチン接種についてはどう考えればいいでしょうか?