心と体、食、社会課題に関わり続けてきた作家、落合恵子さん。人生後半戦に向けて揺れ動くARIA世代に伝えたいことがたくさんあるといいます。「あなた」を生きるのはあなた以外にいない――そんなメッセージを込めて、暮らしと仕事、家族、社会の今を通して「忘れてほしくないこと」を届けます。

 大型の台風を道連れに、新しい9月がやってきた。

 沖縄や九州は特に、立て続けに台風の大きな被害に見舞われている。友人知己の、まぶしげに目を細めた日に焼けた笑顔が心に浮かぶ。目じりに刻まれた深いしわがすてきな女たち、男たちだ。

 最近の台風情報は鬼気迫る。「とにかく、安全なところに移動してください」。そういった切羽詰まった警告は決して無駄ではないと願うが、どこかで「あとは自己責任だよ」といった含みを感じてしまうのは、この7年と8カ月の長期政権の間に幾度となく覚えた理不尽さからくるものかもしれない。気象予報士やアナウンサーに罪があるのではなく、国や社会そのものが、「自己責任再確認社会」、「自己責任刻印社会」へと流れていくような……。そんな気がしてしかたがない。

 発生当初は自然災害と呼ばれるものであっても、ある程度予測できながらも手を打たずにきたのなら、それは既に人災と呼ぶべきものだろう。

暮らす人の安全安心に国は注力すべき

 国はそこに暮らすもののいのちと安全安心にこそ、すべてのエネルギーを注力すべきだ。もとはといえば、わたしたちの税金なのだから、わたしたちの暮らしを守る資金に使うべきだと思うがしかし、その実感からは程遠い日々が続く。地方の自治体も青息吐息だ。

 地方に資金を渡し、その地域に合った防災対策に使ってもらうほうがよほど有用だ。自治体職員といえども、まずはその地方で暮らす生活者であるのだから。

コロナ、災害……「こんな時こそ」のメッセージを掲げて
コロナ、災害……「こんな時こそ」のメッセージを掲げて

 台風襲来の一方で、特にテレビメディアのほとんどは、次は誰が自民党総裁か? に集中。総裁選が今日(9月8日)告示された。肝心の政策はいまいちはっきりしないし、まずは現政権の負のレガシーについてこそ、問い直しをしない限り前には進めないと思うのだが、その気配はない。あきれるほどある負のレガシーを放置しておいては、誰が総裁になったところで、何も変わりはしないのに、と名残の猛暑の中でひとり地団駄を踏む。すでに結果は出ているのだが。