心と体、食、社会課題に関わり続けてきた作家、落合恵子さん。人生後半戦に向けて揺れ動くARIA世代に伝えたいことがたくさんあるといいます。「あなた」を生きるのはあなた以外にいない――そんなメッセージを込めて、暮らしと仕事、家族、社会の今を通して「忘れてほしくないこと」を届けます。

 「お元気ですか?」と聞くことさえ、一瞬、ためらうような日々がずっと続いている。2月、3月、4月、5月、6月、7月、そして、もう8月。それぞれの季節に関して、印象が淡すぎるのも、コロナ禍のせいだろう。植物はもとより、ひとと落ち着いて向かい合うことが難しくなっている

 「お元気ですか?」と聞くと、さまざまな言葉で、ひとそれぞれの元気ではない状況が、はじめはためらいがちに、やがてはせきを切ったように返ってきそうだ。不安で不穏で不安定なこの日々は、今後もまだまだ続きそうな予感がする。

 なんてこった! ざけんなよ! と誰に向かってかは不明な憤りを夜空に叫ぶ気力もどこか萎え気味。ところで、Go To トラベルってなんなの? 観光業界の切実すぎる苦しさはわかるが、一時、観光客がやってきて潤ったとしても、新型コロナウイルスを持ち込まれ、置き土産にされて困るのは、そこで暮らす人々と観光地自身だ。「トラベル」ではなく「トラブル」と揶揄(やゆ)されるが、本当にひどいもんだ。与党の力ある議員に観光業界からも献金がかなりされている、と雑誌や日刊紙は報道していた。

 「まあ、そんなもんだよね、政治とは」

 と、わかった風にうなずいてはいけない。このうなずきと諦め、青っぽさの欠如が、政治を腐敗させるのだから。