「どうして女子の変化にそんなに動揺する?」

 「いいおじさん」は、職場のPCの前で「女の子」がため息をついたり、落ち込んでいたりする風だと、さらにちらっと涙なんか見せたりすると、動揺する

 「どうしたの? 何があったんだ? えっ? ほんとどうした? ぼくでよければ言ってごらんって、大騒ぎしたりするのよ」とM子。

 「何があっても動揺しない男性よりはいいけど、どうして女子の変化にのみ、こんなに敏感なのか。女子時代をとっくに卒業した姉世代としては不思議だわ」

 M子の話を聞いていた、彼女とほぼ同世代のK美が相づちを打つ。

 「おじさんがセンシティブなのは分かるけど、心底そうなら、女子に限らず、男子にもそうしろよ、と思うよね」

 「女子も女子だと思う。堅いこと言うつもりはないけど、職場じゃ涙はイエローかレッドカードだぜ。つい、ため息ついたり、落ち込みたくなることもあるだろうけどさ、いちいち自分の感情の揺れを外に披露したりするのは、なんだかさあ」

 「そういうのって、感情の押し売りというか」

 「と言うと、女は女にきついって、いいおじさんは言うんだよね。そうじゃないのに」と、姉の世代。

 感情を高々と掲げられると、それだけで相手はひるむ。ひるませるのもひるむのも確かにフェアな人間関係ではない。

 だから、問題は「いいおじさん」側だけにあるのではなく、おじさんを動揺させ、ひるませた女子の側にもある……と、穏健派のR子。

 「そういうのって、だめ。どっちにもいい顔するのって。これはね、差別の問題なんだよ。女子を甘やかすことを差別だと思わない、いいおじさんは、知らず知らずのうちにセクシストになっている、いいおじさんどころか、悪いおじさんだ!」と、M子。

 「とにかくさ、わたしたちは『当たり前のひと』、として職場にいるんだよ。甘えるためでも、寄りかかるためでも、誰かに引き上げてもらうためでも、おじさんに評価されるためでもなく、もちろんおじさんに守ってもらうためでもなく。そのことの意味をかみしめてくれないと。結局は、女子の潜在能力に蓋することになるんだよね」