経済・社会環境が激変する中、生き残る組織とそうでない組織の差が鮮明になっています。予測が困難な状況で選択の糸口を発見しイノベーションを起こすための最重要事項、それは「いかに失敗するか」ということ。組織が生き延びるための失敗の要件を、早稲田大学ビジネススクールの入山章栄教授が経営学の観点からひもときます。全3回でお伝えします。

(1)人にも組織にも「失敗の時代」が到来する理由
(2)イノベーションを生むリーダーはいつも笑顔
(3)革新を生む失敗をするための「定性評価」と「ヤミ研」 ←今回はココ

―― 前回は星野リゾートを例に、失敗を重要な学習の機会と捉え、ミスの報告を吸い上げて業務改善に生かす仕組みを学びました。失敗を恐れず、生かせる組織になるためには、そもそも仕組みから変える必要があるということでしょうか?

入山章栄さん(以下、敬称略) その通りです。中でも、重要なのは人事評価の仕組みです。例えば、個人の今期の実績を、いろいろな項目について5段階の指標などで評価する方法がありますが、これは新しいチャレンジを妨げてしまいます。評価される側からすると、もし失敗した場合には評価が下がります。すると、自社の既存の範囲を超えて新しい知を探そうとする「知の探索」的な活動がしづらくなるからです

 今、グローバルではノーレーティングという人事評価の流れが来ています。これは評価しないという意味ではなく、人間を5段階などの紋切り型ではなく定性評価するもので、そのために上司とのミーティングを多く設けます。この方法は、技術系企業やベンチャー企業の多くで取り入れられています。

入山章栄・早稲田大学ビジネススクール教授。「紋切り型の相対評価を廃止し、定性評価するノーレーティングの人事評価制度がグローバルの潮流です」
入山章栄・早稲田大学ビジネススクール教授。「紋切り型の相対評価を廃止し、定性評価するノーレーティングの人事評価制度がグローバルの潮流です」