TBSアナウンサーとしてのキャリアをこの春に“卒業”した堀井美香さんと、2016年に朝日新聞社を退職した稲垣えみ子さん。共通するのは、「長年勤めた会社を50歳で辞める決断をし、新たな道に進む」という点。連載3回目は、堀井さんが辞めた後にしたいことについて語ります。稲垣さんが「度胸がある!」と驚嘆した堀井さんの行動とは?

(1)稲垣えみ子&堀井美香 50歳で会社を辞めるという決断
(2)稲垣えみ子「50歳で辞める」10年間となえ続けた呪文
(3)堀井美香「会社で身に付けた “型”を次世代に伝えたい」 ←今回はココ
(4)稲垣えみ子 50代でピアノ再開、「できない」から没頭

「バイトのマッチングサービスもよく見るんです」

堀井美香さん(以下、堀井) 稲垣さんのことは勝手に“ミニマリストの師匠”と思っているのですが、会社を辞めると決めてから、ますますその生き方に共感しています。私自身は田舎の出身で、もともとお金はあまり使わないタイプだと思っていたのですが、稲垣さんの徹底した節約生活を拝見してから、暮らしの中で「無意識に広げ過ぎていたもの」を自覚するようになりました。

 今は子どもたちも巣立って夫と二人暮らしなのですが、「もう六畳一間でもいいかもね」なんて話しています。いくつも部屋があっても、結局過ごすスペースって限られてくるので。住まいに限らず服もそんなに数はいらないし、年齢を重ねるにつれて衣食住にかかるお金はどんどん減っていきますよね。その分、かけるべきところにはかけていきたいとは思っていますが、稲垣さんの本を読むと「そんなに派手な生活をしなければ老後まで楽しく生きていけるかも」と勇気をもらえます。

「自分のアナウンス技術も含めて『ここまでは到達したい』と決めていた目標を設定していたのですが、あるとき、そこに行き着いたなと思えて。会社員としてやり切った感がありました」(堀井さん)
「自分のアナウンス技術も含めて『ここまでは到達したい』と決めていた目標を設定していたのですが、あるとき、そこに行き着いたなと思えて。会社員としてやり切った感がありました」(堀井さん)

稲垣えみ子さん(以下、稲垣) おっしゃる通りで、我が身を振り返っても、いま何の不安もなく過ごせているのは「もういらないよね」「もっと小さくていいよね」という発想を持てたことが本当に大きいです。一度広げたものを閉じるって、普通は抵抗がありますよね。どこか敗北感があって「昔はもっとできたのに」と過去の自分と比較してしまう。

 その考え方のままでは、収入が減る老後は自動的に暗くつらいものになってしまう。でも、実際やってみれば、お金をかけなくても楽しいことは山ほどあることに気づきました。収入が減ったとしても、支出をそれ以上に減らせばちょっと余るわけだから。シンプルに収支のバランスを整え直して「これでも大丈夫だよね」と思えたら、もう老後の不安から解放されますよ。

堀井 稲垣さんが辞めた後にあえて定職に就かず、いろいろな仕事を楽しんでいると伺ったときもすごく共感できました。私もアナウンサー以外の仕事に興味があって、アルバイトマッチングサービスもよく見るんです。仕分けの仕事とか、サービス業とか、臨時のアルバイトでいろいろやってみたくて。