TBSアナウンサーとしてのキャリアをこの春に“卒業”した堀井美香さんと、2016年に朝日新聞社を退職した稲垣えみ子さん。共通するのは、「長年勤めた会社を50歳で辞める決断をし、新たな道に進む」という点。堀井さんと稲垣さんが大きな決断をした理由は? 最後に明かした堀井さんの決意の一言を読み逃しなく!

(1)稲垣えみ子&堀井美香 50歳で会社を辞めるという決断 ←今回はココ
(2)稲垣えみ子「50歳で辞める」10年間となえ続けた呪文
(3)堀井美香「会社で身に付けた “型”を次世代に伝えたい」
(4)稲垣えみ子 50代でピアノ再開、「できない」から没頭

20代と50代。会社を辞めやすいのはどっち?

編集部 「あと10年頑張れば定年を迎える」というタイミングで、なぜ2人は勇気ある決断ができたのでしょうか?

稲垣えみ子さん(以下、稲垣) あの、50代での退職って、そんなに勇気が必要なのでしょうか。私はむしろ20代で辞めるほうがよほどハードルが高いんじゃないかって思うんです。若い頃はスキルも身に付いていないし、自分の好き嫌いや得意不得意もよく分かっていない。もし20代の私が会社を辞めたとしたら「この先の長い人生を、どうやって生きていこうか」と途方に暮れたと思うんですよね。堀井さんはいかがですか。

堀井美香さん(以下、堀井) そうですね。たしかに若い頃は人生の不確定要素も多くて、自分1人の決断だけで決められない部分もありますよね。「いずれ家族を持ったら大丈夫だろうか」とか。私自身、2人の子どもたちが成人した今のほうが、ずっと身軽に自分の人生を考えられるようになりました。

稲垣 若い頃は自分自身もあやふやで、「私はもっとできるはず」という妄想と「実は案外できない」という現実の間で生きているから、挑戦して失敗してもその原因が自分にあるのか周囲にあるのか分からなくて。その点、年を重ねていろんな経験を経て自分の力量が分かってくると、高望みもしないし、いい意味で開き直ることもできるようになりますからね。

堀井 でも、いざ辞めると決めたら、結構周りにビックリされました(笑)。「堀井さんはずっといてくれると思っていました」なんて後輩に言われたり。

稲垣さんの最新刊『老後とピアノ』(ポプラ社)に、ピアノ好きの堀井さんが感銘を受けたことから今回の対談が実現。共に50歳で大企業を辞めた2人のトークは大いに盛り上がりました
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