タクシー運転手と口ずさんだ歌、「一人じゃないぞ」と思う

大江 僕が住んでいるブルックリンって、東京でいうと上野や浅草みたいな下町の雰囲気があるんです。友達の家に行くのにUberに乗ったら、運転手がカルチャー・クラブの『カーマは気まぐれ』を歌ってる。僕も一緒にマスクしながら「Karma,Karma,Karma,Karma」って歌って、「大丈夫なの?」「大丈夫じゃないけど、とりあえず今日をやってるよぉ」って、そんななんでもない会話をすると、それだけでじーんとして、「一人じゃないぞ」と思ったりしています。

 一時は「殺菌消毒ハイ」状態になるほどコロナ対策をして、外で咳(せき)をする人とすれ違うだけで「感染したんじゃないか」と思ったことも。でも今は、しっかりと感染対策していれば多少混んでいるバスでも大丈夫、と思えるようになった。命さえあればゼロからやり直せる。コロナと共に生き延びてきた実感みたいなものが備わってきたんでしょうね。

続きの記事はこちら
大江千里 60歳の今「そろそろ夢を口に出していこう」

取材・文/柳本操 構成/市川礼子(日経xwoman ARIA) 写真/洞澤佐智子