人生には思いもよらぬことが起きるもの。肩の力を抜いて柔軟に「私の生き方」を見つけていこう――。先輩たちが半生を振り返って贈る、珠玉のメッセージ。日経WOMANの看板リレー連載を、日経ARIA読者にお届けします。ブームを巻き起こした「断捨離」の提唱者、やましたひでこさん。ふとしたことから教え始めた生活の手法が55歳からの人生を大きく変えます。少女のころは低い自己肯定感に苦しみ、これといったものに出合えない日々。大学時代の終わりに学んだヨガが自分を取り戻すきっかけになりました。

(1)55歳で断捨離が開いた人生 ←今回はココ
(2)「いい嫁」のストレスが爆発
(3)「蘇らせること」が次の目標


やましたひでこ
やましたひでこ 1954年東京都生まれ。一般財団法人断捨離代表。早稲田大学文学部卒業。在学中に出合ったヨガの行法哲学「断行・捨行・離行」をもとにした「断捨離」を日常の「片づけ」に落とし込み、実践可能な自己探訪メソッドを構築。2001年から断捨離塾を始める。09年の初の著書『断捨離』(マガジンハウス)をきっかけに、その実践的メソッドが国内外で幅広く支持される。近著に『人生を変える断捨離』(ダイヤモンド社)、『定年後の断捨離』(大和書房)など。

 「断捨離をして、人生が変わりました」と言ってくださる方がたくさんいらっしゃいます。でも、断捨離で一番人生が変わったのは、きっと私です。

 断捨離は、ただ物を捨てて、片づけることではありません。無用な物を1つ捨てると、1つ空間ができる。そんなふうに生活を新陳代謝し、「今」の自分にとっての「不要・不適・不快」を手放す。そして、人生に「要・適・快」を招き入れるプロセスです。

 主婦だった私が、日常の生活空間を整えていくための断捨離について伝えることを始めたのは55歳のとき。そこから、新しい人生が始まりました。断捨離の教室を開き、本を書き、断捨離という言葉はブームにもなりました。

 実は、私が断捨離と初めて出合ったのは学生時代なんです。自分のなかで、物と空間との関係を暮らしの新陳代謝として体系化するのに30年かかりました。でも、この30年があったからこそ、今があります。

 結婚前の私を知っている人は、今の私が同一人物だとは思えないかもしれません。それくらい、かつての私は存在感がありませんでした。おとなしくて、ぼんやりしていて、いるかいないか分からないような子ども。それは、家族との関係が大きく影響しています。

「かつての私は存在感がない、いるかいないか分からないような子どもだった」
「かつての私は存在感がない、いるかいないか分からないような子どもだった」