人生には思いもよらぬことが起きるもの。肩の力を抜いて柔軟に「私の生き方」を見つけていこう――。先輩たちが半生を振り返って贈る、珠玉のメッセージ。日経WOMANの看板リレー連載を、ARIA読者にお届けします。世代・トレンド評論家、マーケティングライターの牛窪恵さんの2回目は、セクハラやストーカー被害に遭い、キャリアに悩んだ20代を振り返ります。

(1)TVマンの父に振り回され高校を中退
(2)ストーカーに仕事まで奪われる ←今回はココ
(3)経営者としても妻としても失格だった


牛窪恵
世代・トレンド評論家、マーケティングライター
牛窪恵 1968年東京都生まれ。日本大学芸術学部を卒業後、大手出版社勤務、フリーライターを経て、2001年、マーケティングを中心に行うインフィニティを設立。多くのトレンド、マーケティング関連の著書を通じ、「おひとりさま」「草食系(男子)」などの流行語を広めた。19年に立教大学大学院(MBA)博士課程前期を修了。20年から同大学大学院ビジネスデザイン研究科客員教授。テレビ番組のコメンテーターや、財務省財政制度等審議会の専門委員なども務める。

 新卒で入った出版社で仕事をしていた当時は、まだパソコンは普及していない時代。会議の議事録も手書きでした。書くことが早かった私は役員会議などに呼ばれ、どんな長話でもその場で議事録にまとめました。日々の業務との両立は大変でしたが、役員の話を聞き、決算書の見方や経営を学べたことは、後に起業を決めたひとつのきっかけにもなりました。

 一方で、悩まされていたのが上司からの過度なセクハラです。社内の個室で迫られ、身の危険を感じて部長に訴え、女性の先輩にも相談しましたが、「あなたに隙があったから」と皆の前で笑われ、大きなショックを受けました。

 その頃、後輩が仕事のストレスから出社できなくなり、退職。とても優秀な女性でしたが、私は自分のことで精いっぱいで、守ってあげられなかった。セクハラもさほど改善されず、職場への未練が消えました。もともと、脚本家を目指していて、会社は丸5年で辞めると決めていたこともあり、27歳で退職しました。

 その後は、短期間ニューヨークに渡り、脚本の知見を増やすことに。しばらく休むつもりでしたが、じっとしていられず、気が付けば求人雑誌を見て、派遣会社に登録していました。