人生には思いもよらぬことが起きるもの。肩の力を抜いて柔軟に「私の生き方」を見つけていこう――。先輩たちが半生を振り返って贈る、珠玉のメッセージ。日経WOMANの看板リレー連載を、ARIA読者にお届けします。料理愛好家・平野レミさんの最終回です。最愛の夫を亡くし寂しい思いを抱えながらも、息子たちとそのお嫁さんたちに囲まれながら、きょうも「料理」に向き合っていくのでした。

(1)期せずしてシャンソン歌手デビュー
(2)和田誠さんと出会って1週間で結婚
(3)家族がおいしいと言えばそれでいい ←今回はココ


平野レミ
料理愛好家
平野レミ ひらの・れみ/東京都生まれ。シャンソンを学び、銀座日航ホテル(当時)のミュージックサロンで歌手デビュー。1972年にイラストレーターの和田誠さんと結婚 。2人の息子の育児に専念したのち、料理愛好家として活躍。明るい性格と、「”シェフ料理”ではなく、”シュフ料理”」をモットーとしたユニークなレシピで人気に。2001年に発売した多機能鍋「レミパン」が大ヒット。料理を通した町おこし活動も話題に。近著に『家族の味』(ポプラ社)、『野菜の恩返し』(主婦の友社)

 30年ほど前、夫の和田(誠)さんとサンフランシスコのチャイナタウンで鍋を食べました。そのつけだれがとってもおいしくて、細かく刻まれて入っていた野菜は何かと尋ねると、シェフが「芝茜」と書いたメモをくれました。それがパクチーだと知ったのは、帰国後しばらくしてから。パクチーなんて日本ではあまり知られていない頃。近所のタイ人が庭で栽培していたものをもらって作ったのが、パクチー醤油(じょうゆ)です。以来、わが家ではギョーザや鍋には、パクチー醤油が欠かせません。

 そんなふうに、海外で食べた味を再現したり、食材を自由に組み合わせてオリジナルの味を探求したり。レシピを考えるのは楽しいんです。唯一、らっきょうとチョコレートだけは合わなかったけれど。(笑)

 30代後半に初めての著書を出版。それ以降、ありがたいことに何冊も本を出させていただきました。でも、自宅で料理の撮影をするときの悩みは、キッチンやテーブルの上がすぐに散らかってしまうこと。鍋の蓋を立てることができたら省スペースになるけれど、そんな商品はなかなか見つからない。だったら作ってしまおうと、3年間試行錯誤した末、2001年に「レミパン」が誕生しました。鍋とフライパンを兼ね備え、蓋も自立し、ストレスなく置けることが支持されて、おかげさまで500万個以上売れています。うれしいですね。