人生には思いもよらぬことが起きるもの。肩の力を抜いて柔軟に「私の生き方」を見つけていこう――。先輩たちが半生を振り返って贈る、珠玉のメッセージ。日経WOMANの看板リレー連載を、ARIA読者にお届けします。料理愛好家・平野レミさんの第2回。夫となる和田誠さんと出会い結婚、出産。主婦の経験を生かして料理愛好家へと転身したきっかけとは。

(1)期せずしてシャンソン歌手デビュー
(2)和田誠さんと出会って1週間で結婚 ←今回はココ
(3)家族がおいしいと言えばそれでいい


平野レミ
料理愛好家
平野レミ ひらの・れみ/東京都生まれ。シャンソンを学び、銀座日航ホテル(当時)のミュージックサロンで歌手デビュー。1972年にイラストレーターの和田誠さんと結婚 。2人の息子の育児に専念したのち、料理愛好家として活躍。明るい性格と、「“シェフ料理”ではなく、“シュフ料理”」をモットーとしたユニークなレシピで人気に。2001年に発売した多機能鍋「レミパン」が大ヒット。料理を通した町おこし活動も話題に。近著に『家族の味』(ポプラ社)、『野菜の恩返し』(主婦の友社)

 「レミさんに会いたいという人がいるよ」。TBSラジオにレギュラー出演していたある日、局の方に声を掛けられました。ごちそうしてくれるというから、軽いノリでOKしてお会いしたのが、イラストレーターの和田誠さんでした。私は、有名人の和田さんを知らなかったのですが、和田さんは、私が歌手として出演した生放送の番組を見たことがあったそう。歌い出しに失敗して歌い直した様子が面白くて、印象に残っていたんですって。その私がラジオで、TBSの局アナだった久米宏さんにデタラメなことを言ったり、シェフにレシピを取材したりするのを聞いて、会ってみたいと思ったそうです。でも、マージャン仲間だった久米さんに頼むと、「あんな人と付き合うと一生を棒に振りますよ!」と紹介してくれず、TBSの偉い人に頼むと、「紹介はできますが、責任は持ちませんよ」。私のイメージ、どんなだったのかしらね(笑)。

 和田さんは物静かで穏やかで、とってもインテリでした。カレイの料理が出てきたとき、まだ若くて何も知らなかった私が、目が2つとも右側にあるのに驚くと、「海底を泳ぐから、片側に偏っても大丈夫なんだよ」。そんなふうに、知らないことをたくさん教えてくれて楽しかったですね。それから3日連続で、和田さんの家に遊びに行きました。なぜか毎日、幽霊話で盛り上がっていたのよね(笑)。