人生には思いもよらぬことが起きるもの。肩の力を抜いて柔軟に「私の生き方」を見つけていこう――。先輩たちが半生を振り返って贈る、珠玉のメッセージ。日経WOMANの看板リレー連載を、日経ARIA読者にお届けします。五輪メダリストで、メンタルトレーナーとして活躍する田中ウルヴェ京さん。ソウル五輪でメダルを獲得、21歳で引退。五輪メダリストという称号に酔い、日記に「余生をどう過ごそうか」とまで書きますが、「今、ここ」にある自分自身を見失い心身が疲弊していきます。極めつきはある新聞社からの「あの人は今」の取材依頼でした。

(1)「五輪など無理」の声に奮起
(2)銅メダル後3年、あの人は今 ←今回はココ
(3)逆境で気づいた幸せの法則


田中ウルヴェ 京
五輪メダリスト・メンタルトレーニング指導士
田中ウルヴェ 京 1967年東京生まれ。88年ソウル五輪シンクロ・デュエットで銅メダル獲得。現役引退後、日・米・仏のシンクロ代表チームコーチを10年間歴任。91年渡米し、米国セントメリーズカレッジ大学院修士号取得(スポーツ心理学)。99年米アーゴジー心理学専門大学院、2000年サンディエゴ大学大学院で学ぶ。現在、トップアスリートから一般まで幅広くメンタルトレーニングを指導、企業研修や講演等を行う。2017年IOC国際オリンピック委員会マーケティング委員に就任。夫はフランス人、一男一女の母。日本スポーツ心理学会認定スポーツメンタルトレーニング上級指導士。公式ホームページ

 一瞬、自分の人生の中で一番カッコいい「オリンピックまでの4年間の日々」を書きたい衝動に駆られたが、「私、メダルを取るまで頑張りました!」的な美談は、読んでいてつまらん。というわけで、ざっくりと省くことにする。

 しかし、「バカみたいに必死に」努力をし、メダリストになったことで得た「誰にでも汎用可能なステキなこと」は一つあるので、これだけは書いておく。それは、「今、ここ」に集中することの素晴らしさだ。

 そもそも私たちは、すぐに頭でっかちに物事を判断してしまうことがある。社会経験が増え、職場の中の「ベテラン」になると、自分なんか井の中の蛙(かわず)にすぎないことも忘れ、「自分が分かっていることが分からない新人」を見下したり、ほんの一側面を見ただけで「この上司使えない」とあきれたりする。しかし、「たいそう偉いつもりでいる自分」なんて、結局は「自分、何様のつもり?」なのだ。