国際通貨基金(IMF)のラガルド専務理事は『日経xwoman(クロスウーマン)』と『日経ARIA』の創刊に向けてビデオメッセージを発信した。その中で、日本の将来の実質GDPについて「直近の成長推移に比べ、40年後に25%減少する」というIMFの試算に基づく警鐘を鳴らした。同時に、「労働市場の男女不平等解消や、企業の女性エンパワーメント」などの改革の実行で、人口減少や少子高齢化の逆風の中でも実質GDPを15%伸ばせると分析。日経xwoman総編集長・日経ARIA編集長の羽生祥子が、IMFエコノミスト見明奈央子氏へ、分析について詳しい内容を聞いた。

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IMFラガルド氏 日本GDP25%縮小に警鐘と打開策


IMFの試算と分析は「ゆでガエル」化した日本への警鐘

羽生祥子編集長(以下、羽生) 先日は『日経xwoman』と『日経ARIA』の創刊に際し、ラガルド専務理事から動画メッセージをいただき、ありがとうございます。

 ラガルド氏は日本の実質GDPについて、現状の政策のままだと「直近の成長推移に比べ、40年後に25%減少する」というIMFの試算に基づいて警鐘を鳴らしています。しかし同時に、ジェンダーギャップを解消する総合的な改革の実行で、人口減少や少子高齢化の中でも、40年後には実質GDPを15%伸ばす事ができるという予測も発しています。

 25%縮小、15%回復という数字自体が非常に衝撃的です。しかし、この試算に対して「それは経済の話ではなくて、女性支援の話なんじゃないの?」「会議を18時に切り上げて経済が上向くなら苦労はない」といったような、ジェンダー問題を相変わらず軽視する男性経営者の反応も散見されました。まず、この試算と分析が行われることになった経緯を教えてください。

国際通貨基金 アジア太平洋地域事務所 エコノミスト 見明奈央子氏(以下、見明) アベノミクスの開始から6年が経とうとしています。でも日本の構造改革は遅々として進んでいません。日本の人口が減少に転じている中で、少子高齢化に対するマイナスのインパクトというものがなかなか伝わらず、「ゆでガエル」になりつつあることへの危機を感じています。

 IMFは毎年日本経済の審査(IMF Article IV Consultation)を行っていますが、2018年の対日経済審査のメインテーマは、日本経済に対する人口動態の影響です。実は、2009年の民主党政権の下で女性活躍推進が話題になったのですが、残念ながらIMFではこれを正面から取り上げた形跡はありませんでした。しかし今回は、非常に重要な課題として取り上げています。