経済成長の放棄は次世代への責任放棄

日経xwoman総編集長、日経ARIA編集長 羽生祥子
日経xwoman総編集長、日経ARIA編集長 羽生祥子

羽生 ARIA世代は働く母親で子どもがいたり、リーダーとして次世代のことを考えたりと、40年先を「遠い話」ではなく、人ごとではない感覚も持ち合わせています。

見明 よく「経済成長が低くてもマイナスでもいい」という意見がありますが、「健康で文化的な最低限度の生活」を守るためには経済成長が必要です。経済成長を放棄することは、次世代への責任放棄であると思います。

 男性が長時間労働に従事し、女性は育児や介護などのケア労働を行うというのは、バランスが悪いです。日本と韓国は大卒女性の比率が高いのに、潜在的な能力を労働市場で活用しきれていません。両国は「世界で最も高学歴専業主婦が多い国」と揶揄されています。

「15%回復」のうち11%は労働市場の男女格差解消から、4%は構造改革から

見明 羽生さんのお話の冒頭で、男性の経営者から冷笑的な反応があったということですが、これは決して「男性が早く家に帰るだけで数字が15ポイント上がる」という意味ではありません。「40年後には実質GDPを15%伸ばす」の内訳についてお話すると、まず11%は、労働市場における二重構造の是正と男女間の所得格差の解消に由来します。

 日本の労働市場の二重構造とは、正規・非正規間の間はもちろん、正規雇用の中でも総合職と一般職との間の所得格差が歴然と残っている構造のことです。また、男性の多くは、介護といったケア労働に直面したとき対応できない働き方を強いられています。大企業で見られる、終身雇用を前提とした日本型正規雇用は、他国ではほとんどありません。労働市場の流動性が低いのも日本の特徴です。

 2017年、私がジェンダーと日本の終身雇用についてのペーパー(※3)を書いた際には、正規雇用の間でもコース別管理制度の下で実質的な女性差別があり、改善の余地があることを指摘しました。また、終身雇用制度の下、労働時間の長時間化が女性の活躍を阻害していると指摘、男女を問わず働き方改革を推進する必要性を唱えています。

(※3)Miake (2017)

羽生 成長率15%回復説で、残りの4%は何に由来するのでしょうか。

見明 コーポレートガバナンス改革や流通市場等の改革です。裾野の広い中小企業の経営状態にも影響が出るので、うまくバランスを取りながら改革を進める必要があります。