働き方も価値観も大きく変化し続ける今、新しい価値を創造するには多様性ある組織が必要です。一人ひとりの意見や疑問を尊重し合い、新たなことに挑戦する活気あるチームをつくるためのキーワードが、心理的安全性。心理的安全性のあるチームとは何か、どうすれば心理的安全性は構築できるのか、ZENTechの取締役 石井遼介さんが実践的な手法を交えて解説します。

(1)心理的安全性とは? 忖度しない活気あるチームをつくる鍵
(2)チームを変えるのは正論よりリーダーの役に立つ行動
(3)トラブルには「○○○」 魔法の言葉で活気あるチームに ←今回はココ

良くも悪くも、行動を強化するものは?

編集部(以下、略) 前回は「自信」や「やる気」など心の中のことに執着するよりも、行動に集中しようというお話がありました。その際、望ましい行動を増やしていくために、どうしたらいいですか。

石井遼介さん(以下、石井) 行動は、きっかけによって起き、行動の後のみかえりが次の行動に影響を与えます。例えば「トラブルが起きた」(きっかけ)ことに対し、「上司に報告」という行動をとったとき、報告したこと自体を感謝されたり、対処法を的確に指示してもらえたりといった、ハッピーなみかえりがあると、気づいた時点ですぐに報告するという行動が継続します。

 けれども、日ごろから上司に「何でも言ってね」と言われていても、実際にトラブルが起きたときに怒鳴り散らされたり、突き放されたりすれば、報告するという行動は減り、トラブルを隠すようになります。どんなみかえりがあるかで、次にとる行動が変わってくるのです。

 このような行動原理は動物でも同じです。例えば犬の場合。ボールを取ってくるとおやつがもらえる、飼い主が喜んでくれるというハッピーがあれば、その行動を繰り返すようになるし、ソファに乗るたびに叱られれば次第に乗らなくなるというように体験学習をします。つまり、体験してその結果(みかえり)から学習するのが、「きっかけ→行動→みかえり」なのです。

 人はこれに加えて言葉を持つので、まだ体験していなくても行動を学べます。車にひかれたことはなくても、「道路に飛び出すと危ない」と言われたら、適切な行動が分かりますよね。言葉によって未来の「みかえり」と関係づけ、それによって行動を変えることができるのです。

出典/『心理的安全性のつくりかた』(日本能率協会マネジメントセンター)
出典/『心理的安全性のつくりかた』(日本能率協会マネジメントセンター)