働き方も価値観も大きく変化し続ける今、新しい価値を創造するには多様性ある組織が必要です。一人ひとりの意見や疑問を尊重し合い、新たなことに挑戦する活気あるチームをつくるためのキーワードが、心理的安全性。心理的安全性のあるチームとは何か、どうすれば心理的安全性は構築できるのか、ZENTechの取締役 石井遼介さんが実践的な手法を交えて解説します。

(1)成長するチームを作る心理的安全性って何ですか ←今回はココ
(2)リーダーの心理的柔軟性がチームを変える
(3)行動分析と言語行動でチームのカルチャーを作る

言いにくい空気がある、忖度(そんたく)が働くチームに、成長はない

編集部(以下、略) 心理的安全性とはどんなことを指すのですか?

石井遼介さん(以下、石井) 心理的安全性があるチームとは、地位や経験にかかわらず誰もが率直な意見、素朴な疑問を言い合える、職場・チームのことです。みんなが和気あいあいとしているアットホームな職場ということではありませんし、他部署や他社に対して一枚岩のように結束が固いチームということでもありません。結束が固いチームは異論を唱えづらかったり、単にアットホームな職場は努力しなくても安全だったりしかねないからです。

 心理的安全性は、チームや成果のために必要なことは発言したり試したりしても、居づらい雰囲気になることがない、心理的に安全であるということなのです。文字面で誤解されがちですが、すぐに妥協する「ヌルい職場」ということでは決してありません。仕事に対しては高い基準をもっているかどうかがポイントです。

 例えば「上司が提示したスタッフ配置に疑問があっても口に出しにくい」「お客様アンケートの設問が時代に合っていないのに、前任者の否定になりそうで言えない」など、変化をもたらそうとすることがリスクになる組織や、個々のメンバーの気づきや知識を共有財産にできないチームは、速いスピードで変化していく時代に合わせて成長していくことができません。

口ぐせでわかるヌルい職場、キツい職場

―― 自分たちのチームが、アットホームで居心地がいいだけなのか、心理的に安全で忖度なく発言できるのか、違いはどうしたらわかりますか?

石井 心理的安全性と仕事の基準をマトリックスにした図を見てください。それぞれのチームが口にしがちなフレーズも書き添えています。例えば、「ああそれは、仕方ないね」というフレーズを耳にすることが多いとしたら、ヌルい職場の可能性大ですし、部下や自分自身が頻繁に「とにかく、頑張ります」と言っているとしたら、キツい職場の可能性があります。それぞれの職場の特徴は以下の通りです。

●ヌルい職場:心理的安全性はあっても仕事の基準が低いので、クオリティーが低いアウトプットでも問題視されず、納期も厳しくない。ぬくぬくとしていられますが、仕事から得られる充実感はありません。

●サムい職場:仕事の基準も低く、心理的安全性も低い職場では、リスクを冒してまで改善や挑戦をして失点を突かれるよりも、仕事をしているふりをするようになってしまいます。

●キツい職場:サポートやチームワークはないまま、高いノルマを課せられた職場です。𠮟責や罰を逃れるために努力するため、メンバーは消耗していくように感じます。

●学習する職場:仕事の基準が高く、かつ心理的安全性も高いとき、チームの学習が促進され、高いパフォーマンスが得られることになります。

口癖で分かる心理的安全性と仕事の基準のマトリックス<br>『恐れのない組織』(英治出版 エイミー・C・エドモンドソン 野津智子翻訳 2021)より、ZENTechにて一部改変
口癖で分かる心理的安全性と仕事の基準のマトリックス
『恐れのない組織』(英治出版 エイミー・C・エドモンドソン 野津智子翻訳 2021)より、ZENTechにて一部改変

石井 いかがでしょうか。どこに当てはまりそうですか? 日本に多いのはキツイ職場です。一見、士気が高く見えるのでマネジメントする側も問題に気づきにくいのですが、ノルマはあるがサポートはないまま、現実的には無理なことでも、部下は無理と言えない。その結果、数字を勝手に作る、顧客に不利益になってでも契約を取ろうとするなどの違法行為が生まれてしまうこともあります。