考えただけでわくわくする京都旅行、でもちょっとした憂鬱があるとすれば「京都のお土産、何を選べばいいのか問題」ではないでしょうか。「365日外食」で京都の食シーンを知り尽くしたライター中井シノブさんが、珠玉かつ旬の京都土産を教えてくれました。記事1本では熱い思いが収まりきらず、2回に分けての公開です。まずはスイーツ編から。今すぐには行けない人も、買うべき土産を先取りチェックしておこう。
(上)新定番スイーツ編 ←今回はココ
(下)調味料&京の食材編
京土産は、これでもう迷わない!
B級グルメから高級料理まで、ミルフィーユのような食の層があって、どこに行ってもおいしいものに出合える京都。京都へ行ったら何を食べようと迷う人も多いのではないでしょうか。そして、さらに悩ましいのが「何をお土産に買って帰るか!」です。
今回は、そんなお悩みにお応えすべく、今イチオシのお土産をご紹介します。伝統の技法を踏まえつつも新たな味に挑戦する創作和菓子や人気料理店のおもたせ、老舗乾物店の彩り豊かな食品など、同僚や友人へのお土産はもちろん、自分用にも買って帰りたいものばかりです。古くて新しい、京都ならではの逸品をご紹介します。まずは選び抜いたスイーツから。
森鴎外が翻訳した『即興詩人』が創作和菓子に!
2020年5月にオープンした和菓子店「菓子屋 のな」。お店の前を通る度に気になっていて、「いつかここでお菓子を買おう」と思っていました。オープンから数カ月後に思い切って立ち寄ると、ショーケースに魅力的なお菓子が並んでいます。なかでも、写真の「アントニオとララ」には、強烈に引き付けられました! 従来の和菓子の要素もあるけれど、味は唯一無二。ハーブを飾るアイデアにも驚かされました。
このお菓子は、森鴎外が9年の歳月をかけて翻訳したアンデルセンの『即興詩人』へのオマージュとして作られたのだそうです。盲目の乙女ララが即興で詩を詠むアントニオと出会うことで、運命が流転していくという物語。アントニオをイメージした濃厚なキャラメルあん玉と、ララをイメージしたトロピカルあん玉で、人生の苦味や恋の甘酸っぱさを表現しています。
あまりにキレイで、口に入れるのがためらわれますが、味わうことでさらに物語が腑(ふ)に落ちるという具合。もともと、「お酒にも合うお菓子を」と作られたこともあって、ワインやシャンパーニュとともにいただきたくなります。
この店を切り盛りするのは、和菓子職人の名主川(なぬしがわ)千惠さんとイタリアン出身の高行さん夫妻。息の合ったお二人のコンビネーションで、発想豊かなお菓子が生み出されます。店内にはイートイン席もあるので、お茶やお酒とともにお菓子をいただくのもお勧めです。