「365日外食」で京都の食シーンを知り尽くしたライター中井シノブさんが、とっておきの京都、そして旬の京都をお届けする連載。第2回のテーマは「ひとりでも楽しめるランチ」です。中井さんをうならせた名店のランチ、1000円台の定食もご紹介します!
2020年は、しっとりとした京都を満喫できる
「せっかく京都へ行くなら、いつもとは違う料理を味わいたい」と思う方も多いでしょう。けれど人気の店は、思いついてすぐに夜の予約が取れるはずもなく、ひとりで料亭の懐石料理を食べるのもハードルがかなり高い。そこでお薦めしたいのが、気軽に味わえる和食店の昼懐石や、有名店のお弁当です。
「祇園祭」や「大文字送り火」といった夏の行事が規模を縮小して行われる2020年は、少し寂しくもありますが、一方で、本来のしっとりとした京都が満喫できるチャンスです。プライベートでも仕事でも、自分のための時間をつくって、京の昼の味を楽しみませんか。
料理屋の白木のカウンターや美しいお庭が見える席で、ひとりじっくり和食に向き合う。丁寧に下ごしらえされた夏の食材、一品一品が違うように仕立てられたお料理をいただくと、和食が世界遺産に登録され、次代に残すべきものだと認められた意味が腑(ふ)に落ちます。
今回は、新型コロナウイルス対策にも配慮した、安心して食事ができるランチの名店をご紹介しましょう。ぜひ、予約をしてお出かけください。
町中の京料理店でミニ懐石を
最初にお薦めしたいのは、京都を訪れたならぜひとも体験してほしい懐石料理のお店。お昼には2時間ほどでいただけるミニ懐石があって、観光途中に立ち寄るのにぴったりです。夜ご飯に備えて、お昼は少し軽めにというときにどうぞ。
「京料理 藤本」の開業は2008年。烏丸御池から近い了頓図子(りょうとんずし)という路地奥で10年を過ごしました。そして、2018年に現在の新町通御池下ルに移転。
「10年、20年と年数を重ねるとともに、店のステージを変えていければいいと思っていました。20代後半に開業してそれからちょうど10年。そろそろ次の段階にと思って移転を決意したんです」と店主の藤本貴士さん。
京都の有名割烹(かっぽう)などで修業を積み、29歳という若さで自分の店を開いた気鋭の料理人が、新たなステージにと選んだのは街中にあるマンションの1階。白木のカウンターが美しい割烹スタイルのお店です。移転直後に、お店の前を何度か通りましたが、移転祝いのお花があふれていて、この店が10年の間いかに愛されてきたかがうかがえました。
カウンターでライブ感を楽しめる
京料理 藤本のミニ懐石は、前菜、お椀(わん)、お造り、ハモ料理(季節の魚料理)、ご飯、デザートという充実ぶり。お椀は熱々、お造りも目の前でそろえてくれるという割烹仕立て。ライブ感を楽しめるのは、料理人が目の前にいるカウンター店ならではです。
「以前は2階にも席のある店でしたが、それではどうしてもすべてのお客様に目が行き届かない。1階のみ、それもカウンター席メインのお店にして、お一人おひとりと、きめ細かにコミュニケーションを取りたかった」と藤本さん。気さくでお話し上手の藤本さんがカウンターに立っていらっしゃると、時間が過ぎるのがあっという間です。
そして、この店のもう1つのお楽しみがデザートなのです。毎日5種類用意される和洋のデザートから好きなものを何種類でも。「いやいや、せっかくだから5種類全部いただきます」という女性が多いのだそう。少量でほどよい甘さ、全種類さらりといただけます。
「割烹店など京料理店には、気後れするという方がいらっしゃるかもしれませんが、そんな心配は不要です。気軽に立ち寄ってください」と言う藤本さん。まずはランチで京料理デビューという方にお薦めしたい実力店です。
住所/京都市中京区新町通御池下ル新明町72 エリタージュ新町1階
電話/075-211-9105
営/12時~、13時30分~の2部制、夜は18時~22時 要予約
休/水曜