「365日外食」で京都の食シーンを知り尽くしたライター中井シノブさんが、とっておきの京都、そして旬の京都をお届けする連載。第2回のテーマは「ひとりでも楽しめるランチ」です。中井さんをうならせた名店のランチ、1000円台の定食もご紹介します!

2020年は、しっとりとした京都を満喫できる

 「せっかく京都へ行くなら、いつもとは違う料理を味わいたい」と思う方も多いでしょう。けれど人気の店は、思いついてすぐに夜の予約が取れるはずもなく、ひとりで料亭の懐石料理を食べるのもハードルがかなり高い。そこでお薦めしたいのが、気軽に味わえる和食店の昼懐石や、有名店のお弁当です。

京都でひとりランチを楽しむなら…
京都でひとりランチを楽しむなら…

 「祇園祭」や「大文字送り火」といった夏の行事が規模を縮小して行われる2020年は、少し寂しくもありますが、一方で、本来のしっとりとした京都が満喫できるチャンスです。プライベートでも仕事でも、自分のための時間をつくって、京の昼の味を楽しみませんか。

 料理屋の白木のカウンターや美しいお庭が見える席で、ひとりじっくり和食に向き合う。丁寧に下ごしらえされた夏の食材、一品一品が違うように仕立てられたお料理をいただくと、和食が世界遺産に登録され、次代に残すべきものだと認められた意味が腑(ふ)に落ちます。

 今回は、新型コロナウイルス対策にも配慮した、安心して食事ができるランチの名店をご紹介しましょう。ぜひ、予約をしてお出かけください。

町中の京料理店でミニ懐石を

 最初にお薦めしたいのは、京都を訪れたならぜひとも体験してほしい懐石料理のお店。お昼には2時間ほどでいただけるミニ懐石があって、観光途中に立ち寄るのにぴったりです。夜ご飯に備えて、お昼は少し軽めにというときにどうぞ。

ミニ懐石2900円(税別)の前菜として出される「夏野菜とイサキの南蛮漬け」。この美しさもごちそうです。お昼でも軽く日本酒やワインをいただきたくなるお料理です
ミニ懐石2900円(税別)の前菜として出される「夏野菜とイサキの南蛮漬け」。この美しさもごちそうです。お昼でも軽く日本酒やワインをいただきたくなるお料理です
夏のメインのお魚料理は、「ハモと地ナスの揚げ出し」。ふっくらと揚がったハモが、利尻昆布とマグロ節でとっただしを含んで絶品。衣のサクッと感も小気味いい!
夏のメインのお魚料理は、「ハモと地ナスの揚げ出し」。ふっくらと揚がったハモが、利尻昆布とマグロ節でとっただしを含んで絶品。衣のサクッと感も小気味いい!

 「京料理 藤本」の開業は2008年。烏丸御池から近い了頓図子(りょうとんずし)という路地奥で10年を過ごしました。そして、2018年に現在の新町通御池下ルに移転。

 「10年、20年と年数を重ねるとともに、店のステージを変えていければいいと思っていました。20代後半に開業してそれからちょうど10年。そろそろ次の段階にと思って移転を決意したんです」と店主の藤本貴士さん。

 京都の有名割烹(かっぽう)などで修業を積み、29歳という若さで自分の店を開いた気鋭の料理人が、新たなステージにと選んだのは街中にあるマンションの1階。白木のカウンターが美しい割烹スタイルのお店です。移転直後に、お店の前を何度か通りましたが、移転祝いのお花があふれていて、この店が10年の間いかに愛されてきたかがうかがえました。

カウンターでライブ感を楽しめる

 京料理 藤本のミニ懐石は、前菜、お椀(わん)、お造り、ハモ料理(季節の魚料理)、ご飯、デザートという充実ぶり。お椀は熱々、お造りも目の前でそろえてくれるという割烹仕立て。ライブ感を楽しめるのは、料理人が目の前にいるカウンター店ならではです。

 「以前は2階にも席のある店でしたが、それではどうしてもすべてのお客様に目が行き届かない。1階のみ、それもカウンター席メインのお店にして、お一人おひとりと、きめ細かにコミュニケーションを取りたかった」と藤本さん。気さくでお話し上手の藤本さんがカウンターに立っていらっしゃると、時間が過ぎるのがあっという間です。

 そして、この店のもう1つのお楽しみがデザートなのです。毎日5種類用意される和洋のデザートから好きなものを何種類でも。「いやいや、せっかくだから5種類全部いただきます」という女性が多いのだそう。少量でほどよい甘さ、全種類さらりといただけます。

デザートは、チーズケーキ、みたらし団子、季節のパフェ、ジェラート、旬のケーキなど5種類
デザートは、チーズケーキ、みたらし団子、季節のパフェ、ジェラート、旬のケーキなど5種類
店主の藤本貴士さん(中央)と板前さんたち。きびきびとしたサービスや細かな質問にも丁寧に応えてくれる頼もしい存在です。昼2900円~(税別)、夜1万3000円(税別)のみ
店主の藤本貴士さん(中央)と板前さんたち。きびきびとしたサービスや細かな質問にも丁寧に応えてくれる頼もしい存在です。昼2900円~(税別)、夜1万3000円(税別)のみ

 「割烹店など京料理店には、気後れするという方がいらっしゃるかもしれませんが、そんな心配は不要です。気軽に立ち寄ってください」と言う藤本さん。まずはランチで京料理デビューという方にお薦めしたい実力店です。

太鼓判リスト1
京料理 藤本
住所/京都市中京区新町通御池下ル新明町72 エリタージュ新町1階
電話/075-211-9105
営/12時~、13時30分~の2部制、夜は18時~22時 要予約
休/水曜