ひとり泊まりを歓迎する宿が増えています。旅慣れた人はもちろん、旅行といえば家族といつも一緒だったARIA世代も時にはひとり旅を楽しみませんか。旅の達人がお薦めする宿を紹介するこの連載。第5回は、年間約100日は泊まり歩く、観光コンサルタントの山田祐子さんがお薦めする「スーパー民宿」厳選3軒です。

―― 「スーパー民宿」という言葉は初めて聞きました。いわゆる民宿とどう違うのですか。

山田祐子さん(以下、敬称略) 民宿と旅館の「いいとこ取り」をしているのがスーパー民宿です。民宿には、農家や漁師が一種の副業として経営する「副業タイプ」と民宿を生業としている「専業タイプ」の2種類がありますが、これまで民宿といえば「安くてカジュアルな宿」あるいは「団体客の合宿施設」というイメージが強かったようです。それで、ひとりで宿泊するのはハードルが高いと思っている人も少なくありませんでした。

 けれど今は専業タイプの民宿が個人客を満足させようと施設をリノベーションするなどして、とても洗練された印象の宿が増えています。しかも高級旅館並みの天然素材を使った料理を出しながら宿代は1万円程度という、魅力的な民宿が全国にはたくさんあるのです。言ってみれば民宿以上、旅館未満。私はそんな宿を「スーパー民宿」と呼んでいます。

―― 旅館や民宿はひとりで利用しづらいという先入観がありましたが、最近はおひとりさまを歓迎する「スーパー民宿」が増えているのですか?

山田 遅まきながら、徐々に増えてきたという感触です。いまだに「おひとりさまお断り」の旅館もありますが、家族経営の小さな民宿では融通が利くところが意外と多いです。ホームページでは2名以上しか予約できない宿でも電話で問い合わせてみると、部屋が空いていれば「どうぞ」と歓迎してくれる宿も少なくありません。

―― なぜ、ひとり旅に「スーパー民宿」を薦めるのですか?

山田 「スーパー民宿」のいちばんの魅力は、地産地消のおいしい料理と地酒を非常に高いコストパフォーマンスで楽しめることです。旅館やホテルでは専門の調理師が料理をしますが、家族経営を基本とする民宿では経営者が包丁を握っているケースが多い。調理師やスタッフにかかる人件費を、食材をはじめ他の経費に回せるため、非常に高いコスパを実現できるんです。

 高級料理屋に劣らない新鮮素材を使った質の高い食事をリーズナブルな料金で頂けて、宿泊もできる。そのうえ旅館ほど気兼ねせず、ふらっと行けて、くつろげる。そんな気安さもお奨めしたい理由のひとつです。第2の実家感覚で通える行きつけの「スーパー民宿」を複数持つのはいいものですよ。

 いつも忙しいARIA世代。ひとり暮らしで自炊という人も、家族のために毎日食事を作る人も、時には自分が作ったものではなくて、誰かが自分のために手間暇かけて作ってくれたごはんを食べたいと無性に思うことはあるはず。例えば大きなプロジェクト続きで心身ともに疲れたとき、自炊するのも面倒だけど、それでも手の込んだおいしいごはんを食べてリフレッシュしたいと思う。

 できれば実家のお母さんが作ってくれる、食べるとほっとするごはんがいい。だからといって、実家のお母さんに手間暇かけてもらうのも気が引けるものですよね。そんな人が第2の実家のようにふらりと訪ねて行けて、リラックスして、おいしいごはんを食べられる。上げ膳据え膳で、しかも実家のように干渉されることもありません。

 次のページで山田さん厳選の「スーパー民宿」3軒を紹介します。