囲炉裏端で楽しむ、山と川のごちそう
山系の一押しは石川県白山の麓、仏師ケ野にある囲炉裏宿「ふらり」です。地名通り、この地はかつて仏師が暮らす集落でしたが、現在は過疎化が進み、限界集落といわれるほどに。その地に囲炉裏宿を構え、家族でたくましく切り盛りしている高木夫妻。周りの住人からは「仏師ケ野の人口増加に貢献したふたり」といわれているそう。
旅行業界ではよく「旅館は人生の縮図」という言葉を耳にしますが、この宿に泊まって、高木さん家族の人間模様を見ていますと、「本当にそうだなあ」とその思いが募ります。高木さん夫妻には3人のお子さんがいるのですが、宿がオープンした頃、末っ子 の長男は赤ちゃんでした。そんな彼が今では上のお姉ちゃん達と一緒に宿の手伝いをするまで大きくなった。その姿に思わず、目を細めながら、自分の家族のことを思い出している。忙しい生活の中で普段は忘れていることも多い実家の家族や自分の子ども時代と重ね合わせ、こんなふうに遠くから思う時間がもてるのは、家族経営の民宿に大人がひとりで泊まるときの醍醐味ではないかと私は思うのです。すっかりくつろいでしまい、まるで家族の一員のように振舞ってしまうことも。こうした疑似家族感を味わえるのは、やはり囲炉裏端で食べるごはんのおかげかもしれません。
この宿では山里ならではの山菜と野菜の恵み、川魚のおいしさを一度に堪能できます。最近は季節ごとに猟師さんから提供される、ジビエ料理を使ったお楽しみも。料亭や旅館で修業したご主人が丁寧に手作りする料理はどれも、料理屋かと思うほどおいしく、また女将のこまやかな設えに心がホッとほぐされるのです。
山麓は周りに本当に何もないので、信じられないほど静かな環境。日常と切り離され、ゆっくりと時間が流れていきます。
囲炉裏宿「ふらり」
住所/石川県白山市仏師ヶ野町乙55
電話/076-256-7550
料金/1万6000円~(ひとり泊まり/1泊2食サービス・税込)
チェックイン/15時 アウト/11時
*一日3組限定のため、電話で予約を