ひとり泊まりを歓迎する宿が増え、ひとり旅の気軽さを楽しむ人がいる一方で、ひとり旅を何となく敬遠してきた人も少なくないよう。そこで前回はひとり旅の達人・石井宏子さんにひとり旅の「はじめの一歩」を踏み出すためにアドバイスをもらいました(前回はここ)。今回は石井さんに、ひとりお籠もり旅にお勧めの個性派「現代湯治宿」3軒を聞きました。

 石井宏子さんがひとり旅ビギナーに「現代湯治宿」をお勧めする一番の理由は「ひとり泊まりを前提にした宿泊プランがあり、ひとり泊まりのお客さんが多いため、人目を気にせず楽しめるから」。ひとたび、その魅力を知ると、ひとりで連泊するリピーターも少なくないそう。達人が厳選した3軒とは?

ハイブリッド型進化系湯治宿「百年ゆ宿 旅館大沼」

石井宏子さん(以下、敬称略) 昔、湯治といえばロングバケーションが主流でした。農業や漁業を生業にしている人々が休みなく働き、疲れた体と心を癒やし、英気を養うため2~3週間を温泉場で過ごしたもの。

 「今年もまた元気で会えたね」と互いに言葉を交わしながら自炊したり、温泉に入ったり、宴会をしたり。時には山のものと海のものを物々交換することも。こうした昔ながらの「自炊場を残す温泉宿」であり、「食事付きの旅館」でもあるのが「百年ゆ宿 旅館大沼」(宮城県)です。ご主人の大沼伸治さんは「都会の人こそ温泉が必要」と、現代人のための湯治スタイルを提唱しました。

 「百年ゆ宿 旅館大沼」は鳴子温泉がある宮城県大崎市の旧玉造郡地域にあります。ここは世界農業遺産に認定された場所。大沼さんは、忙しい現代人が一泊二日という限られた時間で、疲れた心身をリセットするための温泉宿の食事を追求。発酵玄米ご飯と野菜を中心とした食事の、一汁三菜プランを始めたところ、「自分メンテナンス」にと、ビジネスマンやひとり旅の女性客が訪れるようになりました。

 さらに大沼さんの宿で人気が高まっているのは地元の畑を借りて年間を通じて取り組む「農バカンス」です。

発酵玄米ご飯と野菜を中心にした一汁三菜膳。優しい味わいながら、食べ応えがあり女性に人気
「農バカンス」の一コマ。 採れたての枝豆をつまみながら飲むビールは格別とか